福岡県主催の、すこし大げさなイベント名の催事が近くでありましたので覗き
ました。実はときどき顔を出すダンスの会場にうっとりするようなステップを踏
むカップルがいるんです。あたしゃ、踊りが空気伝染をするのを期待して彼ら
に”素敵な踊りだね”と声をかけて以来、ともだちになりド素人の私の感想を
聞かせてくれといわれ、今ではカメラマン兼追っかけになってしまいました。
そのふたりが出場することもあって押しかけました。会場ではすでにラテンの
熱戦がくり広げられていました。花冷えのする日で寒かったのですが場内は

申し訳程度の布地をまとったというより貼り付けているような、ほとんど裸体
に近い状態で身体をくねらせていました。男性は一様にカポネ時代のギャン
グスタイルのヘアーをしていました。ポマードみたいな整髪料で硬くまとめて
いました。肩越しから冷気が降りかかるような寒さでしたが、場内は湯気が
あがるような熱演ぶりでした。さすがに年配のカップルはありませんでしたが
ヤングのカップルのダンスには目を引きつけられました。場内アナウンスが、
”学連!”とコールしていました。あたしには”大学までいってダンス三昧か”と

いう父親の小言が聞こえてきそうな参加ぶりでした。案の定、優勝は大学在
学中のカップルでした。”只今からオナーダンス(模範縁起)を行います”とコ
ールされましたら耳をつんざくような大音響とともにチャチャチャのリズムにあ
わせながら肢体を思い切り屈伸させていました。あたしゃ、女性の衣装が落
っこちないか心配したくなるほどの激しい動きに目を奪われました。青春真っ
盛りを体現していました。昼食後、モダンの部になりました。今度は、中州か
ら派遣されたような煌びやかな衣装のおばさん、いえ、お嬢さんが現れました

男性は何度目かの結婚式のようなモーニング姿で床屋に行ったばかりのよう
なヘアースタイルで、女性をエスコートしています。追っかけのペアーが我々
を見つけて駆け寄ってきました。私は”ここまできたら普段着だよ、あのカップ
ルみたいに踊りたいと思っていただくダンスをやろうよ”といいましたら頷いて
消えていきました。カミサンが、デキもしないくせに偉そうなというような顔をし
ていました。予選がスタートしました。80代と思われる常連さんが悠然と踊っ
てありました。あたしゃ、精一杯背番号に向かって”110番!”と叫びました。

そのカップルは二度と現れませんでした。毎年、エントリーしてくる御仁に声を
かけたことがありますが”いやぁお恥ずかしいが、これが私の健康法ですタイ
”と謙遜してありましたが、踊りっぷりは無人の野をいく我が自尊のステップで
ありました。来年も待ってますよ。お目当てのカップルは見事準優勝!。受賞
した盾をみせながら”ぐっさんにみてもらいたかった”という憎い言葉にグッと
きました。モダンとはワルツ、タンゴ、スローなどの踊りをいうそうですが決勝
までは25曲以上も踊らなければならないそうで、出場者は顔面蒼白、肩で息
をしていました。ご苦労さま。
 
   単なる野次馬の老兵ですが、競技会の翌日、社交ダンスのレッスン
   場に終了する間際に、ふたり揃って現れて”ぐっさんのおかげで勝て
   ました”といって私の好物の和菓子を持参してくれました。爽やかな、
   友情にひさしぶり目頭に汗が出て困りました。     ぐっさんハイ