しかし、それに捉われないもっと強い精神があったから造り上げたんでしょう
ですから、世の中には学ぶことがありまして、学ぶことは確かにいいんですよ
しかし、そこでとまったらだめですよね、みんな。学ぶということ以上のものが
なかったらあれだけのものはできないですよ。しかし、実際に造り上げたんで
す。1回造ったことある人がいたかというと、そうじゃないんですよね。ですから
その精神力というか造ろうと思う信念です。それはやっぱり、すごいものがある
自分たちの今、持っている技術や技能やそういうこと以上のものを出すと

いうか、そういうものに捉われないことですよね。捉われないでいるだとか今
持っている技術以上の何かがなかったらできないですよね。ですから、今の
時代の自分らだってその精神だけを追いかけたら、すごくいろんなことが感じ
られるんじゃないですか。奈良の都は60年間であれだけのものを造ったとい
うことが、すごい。今の人は全然そういうことができないですよ。いろいろな事
実に捉われ過ぎてるから”。私には今イチ、ピンときませんでしたが何となく、
執念みたいなものを感じ取りました。さて、氏の教育施設の「鵤工舎」の経緯

など含蓄のある話が続きます。”今の子は個室で育っています。一番先に困
るのが大部屋での生活ですね。中にはアパートに居る人もいるけど。個室だ
とそこに入り込んで自分の考えの生き方をしますよね。未熟なうちにそう固め
たらだめ。未熟なうちに大勢の人と触れ合っているからこそ、どういくことで生
きていく意味が分かるわけだな。そういうことをしなくちゃなんない。 アパート
から通ってもいいですかというような人はやめてもらう。そうじゃないと、みんな
して力を合わせる時にできませんよ。ですから、全部で生活しています。入っ

てきた子は、何にもできないんですよ。先輩のためにできることいったら掃除
と食事の用意。これを1年間やるですわ。全然美味しいものは作れませんから
1年経ってようやく美味しくなったら、また交代。だから美味しいもの は食
べられない。都会からきた子は、冷蔵庫と大の仲良し。作るものは冷凍食品
みたいなもの。田舎からきた子は、ほとんどおかずというものをつくらない。
味噌汁と漬物ぐらいかな。人に聞いたり本をいくら読んだってなかなか本当の
ものは作れない食べてみなくちゃわかんないわけだから。みんな、わからない

からやっぱり本を読んでやるんだよ。はっきり言えるのは料理の上手いのと
つくりのうまいのと仕事は比例します。はっきり出ます。なぜ、そんなに1年間
めしを作らせるのかというと、その子の段取りのよさ、思いやりが分かる。掃
除をさせると仕事に向かう姿勢、性格も分かる。それを一年間やらせてこの
子はどうゆう人間だから、どう育てなくちゃなんねえと思うわけだ。それは、さ
せなくちゃ分からない。ご飯の用意できましたというので行ってみたら、ご飯と
味噌汁はあるけど、おかずはこんにゃく一切れ。それは、思いやりもなんにも

ないわけだよ。とにかく毎日、大変なことですよね。向こうも大変だけども、こ
っちも大変ですよ。それは、その我慢比べをしなくちゃだめなんです。耐える
ことをしなくちゃならない。それをお互いしないと本当のことは分かりません。
ですから、うちあたりは言葉はあんまり使わなくても、力のある子は重いほう
を、そっと持ちますものね。見ていると。(対談者)そういうふうにして身に付い
たものというのは一生の宝物ですよね。なかなかそういう機会が今の若い人
たちにありませんからね。自分中心の生活をしていますから自分を殺すとか

プレッシャーに耐えるなんてことはなかなかできないですね。「棟梁」を読んで
思ったんだけども、やっぱり我々は効果をすぐ期待してしまうんですよね。待
つという姿勢がなかなか出来ないんですよ。こっちが働きかけて答えてくれな
ければ叱ったり自分本位で考えてしまう”。昨今、大切な人材がモノやロボット
みたいな扱いを受けて凶悪な事件の誘発する温床にもなりかねないご時世に
棟梁はこどもたちと寝起きを共にされて、こどもたちに考えさせて行動させる
なんて、ありがたい環境がもっともっと広がっていけばいいですねえ。
        
       血の通った人間が ぬくもりのある棟梁と
             出会ったこどもたちは幸せですなあ ぐっさんハイ