そのためには彼らのことを知ることがまず何よりも大切だと思ったので、初め
の10年間はひたすらホームレスたちに話しかけ、彼らのことをすべてノートに
書いていました。同時に行政へ訴えかけることも始めましたが、うまくいかなか
ったですね。風当たりはなかなか強く、いつも意見が対立していました。でも、
あるとき、自分たちは“正しいことをしている”という傲慢な気持ちになっている
のではないか“何もしない行政が悪い”と思い込んでいないかと思うようになり
ました。行政のせいにして自分たちが、やらない理由にしている、ということに

やっと気付いたんです。それから方向転換し、自分たちだけで自立支援住宅
などを設立して支援する姿勢に変えていきました。その結果、行政も認めてく
れ03年より北九州市とタッグを組んでホームレス支援をしています。ホーム
レスの問題には二つの局面があると思います。ひとつは、“ハウスレス”。家
がない、食べるものがない、仕事がないなど、物理的なモノに欠けていること
もうひとつは、“ホームレス”。帰る家があっても、家族や友人との関係性が、
途絶えてしまい、孤独感は路上生活のときと同じままということです。全国的

には、“ハウスレス”のみの問題しか支援されていないことが多いですが、北
九州における支援活動の特徴は“ハウスレス”と“ホームレス”の両面から、
サポートしているということです。しかし、そこからさらに進んで“ホーム”の回
復についてまで支援していかなければ問題の解決にならないと私は思ってい
ます。これこそが、ホームレス問題、ひいては現代の社会全体の問題では、
ないでしょうか。北九州市には今、約250名のホームレスがいます。彼らを
支援していき、一日でも早く路上からの脱出をしホームレスを生まない社会

を創造すること。これが私たちが今までも、そしてこれから先も目指していく
ことです。さて昨夜のことですが、いつものように巡回をしていました。19歳
の少年でしたが”ぼくは違います、ホームレスではありません”と言い張るん
です。でも臭いはするし、服装は新しいようでも、風呂にはいっていないこと
がわかるんです。”まあそういわずに食べなさい”と無理に渡したら涙を流さ
んばかりになって、今度は”だれでもいいから話をしたかった、相談したかっ
た”といって堰を切ったように身の上話をするんです。話を聞いたら数日前に

勤め先をクビになったというんです。理由は、たった1日遅刻しただけだという
んです。解雇した会社の担当者は”ウチの会社に文句があったらやめてくれ
だれでもいいから雇う”って日常的にいっていたそうです。今は履歴書じゃなく
てケータイで雇うんですよ。しかも氏名ではなくて番号なんです。派遣会社は
名前では呼ばず番号でチェックしているんです。刑務所とおなじ扱いです。
普通ならひとの採用ですから人事とか総務が関係部署でしょ。ところが派遣
会社は「購買」が窓口なんです。つまり人間も物資を調達するものとして、

「購買」で管理しているんです。消耗品や消費財を調整する感覚なんですよ
今、会社の雇用状況はどうなっているかということなんですが会社によって
多少の違いはありますが、3分の1が派遣社員で若年層は49%も占めてい
ます。しかも、この非正規社員は非人間的扱いとなってしまっていて、只決め
られたことを黙ってやるのが当たり前になり、そのような殺伐とした雰囲気が
”殺す相手はだれでもよかった”という事件はそのような背景があったという
ことを我々は知らないし、マスコミも報道しようとしません。”今どきの若いも
のはとか、やつらはおかしい”ということでは解決しません。
 
避難所で、おじいさんが”これからどうなるんだろう”と呟いたとき横に
  居た高校生ぐらいの男の子が”大丈夫、大人になったら、僕らが絶対
  元に戻します!”って背中さすって言っていた。大丈夫、未来があるさ!
                      震災地での会話から ぐっさんハイ