AV映画の巨匠・若松監督が戦争に翻弄された1組の夫婦の姿を通して戦
争が、もたらす愚かさと悲劇を描いた映画「キャタピラー」は、ベルリン国際
映画祭コンペティション部門で寺島しのぶが最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞
した作品でした。AV映画といえば「おくりびと」も滝田洋二郎がメガホンをと
って第81回アカデミー賞外国語映画賞および第32回日本アカデミー賞最優
秀作品賞受賞作品でしたねえ。こちらの主演の本木雅弘はNHKの大作、

雲の上の坂じゃなくて、「坂の上の雲」の日本海海戦で勝利に貢献した秋山
真之の役を演じて、今の日本の体たらくに渇をいれるような作品に出演して
いました。また、この話はあとで登場させることにしてキャタピラーに戻りまし
ょう。物語は太平洋戦争のさなか、戦地へ行った夫が怪我をして負傷兵とし
て戻ってくる。夫は両手両足を失い顔にもやけどの痕があり耳も聞こえなく、
しゃべれない状態になっていた。神の国を守るため負傷した軍人は軍神と

あがめられるが、妻のシゲコはその夫の世話を押し付けられる。夫の身の
回りの世話だけでなく、食欲と性欲の相手もこなすシゲコ。そんな夫との生
活は一体何の意味があるのか・・・夫の久蔵も戦地で犯した民間人のレイ
プと殺害に苦しめられ徐々に常軌を逸していく。当初は、けなげに軍神の
妻を演じていたシゲコも段々、今の立場に疑問を感じていく。そうして人前
に出るのを嫌がる夫に無理やり軍服を着せてリヤカーに乗せて村中を、

回ります。帰宅したシゲコは夫を無理やり裸にして、圧し掛かりアレを迫り
ます。”食べて寝て、、また食べて、、寝て、”とうわべだけの夫婦生活に飽
き足らないシゲコは遂に不満を爆発させ、食い物を夫、久蔵に無理やり押
し込んだり、殴りつけてしまいます。しかし結婚してあれほど暴力、暴言に悩
まされた夫はシゲコの暴力に怯え、植物人間となった今、只泣き叫ぶだけ
の物体になっています。舞台は終戦を迎えて軍国主義は崩壊。誰もこの、

ふたりを顧なくなってしまいます。シゲコは夫に哀れを感じて、抱きしめなが
ら”ふたりして生きていこう”と呟きます。まあこんな内容なんですが時の流れ
に翻弄されたふたりを通じて世代の冷酷さ残酷さをうきぼりにしていきます。
そういえば朝ドラ「カーネーション」で、国防婦人会の会長さんの息子さんの
戦死公報を受けて町内を練り歩くシーンでは、日頃突っ張っている会長さん
も息子の戦死では母親らしく悲しみに打ちひしがれた姿には本音がにじみ

出ていましたね。さてシゲコ役の寺島しのぶがヨカったですねえ、(ヨカったっ
てなにがよ)。そりゃ演技がですよ、体当たりの演技とはこの映画のことをい
うんでしょうね。(あんた本当は彼女のバディが素晴らしかったと思ってんで
しょ)。ああ今年もヘンな声が聞こえてくるんだ。しのぶっていう女優さんは
歌舞伎役者の尾上菊五郎を父にお母さんは女優の富司純子。やくざ映画
の『緋牡丹博徒シリーズ』で主役を演じて健さんとの絡みもヨカったですな。

芸能界のサラブレッドの女子の部が彼女ならば香川照之は男性の部で、
血筋の良さが目立っています。脱線ばかりで恐縮ですが、AV映画で経費
節減を強いられた習性が色濃く出た映画で名の通った俳優は使わず、登
場人物も少なくしかし話題性のある映画に仕上げた手腕はプロデューサー
の模範となった作品でした。いや、そんなこと以上にAV映画で磨かれた感
性がキラッと光った秀作でした。受賞した寺島しのぶの輝いた顔が、親の
七光りを超えていました。
               
夫のほかにひとり愛して 遠花火 ぐっさんハイ