近代文明の利器、ケータイが東の横綱なら西の横綱がDNAというくらい
凶悪事件の解決の切り札になっている感があります。その象徴的な事件と
して足利事件があります。19年前、栃木県で女児が殺害された足利事件。
再審開始を大きく引き寄せたのも科学技術の進­展だった。「無罪の決定的
証拠だ」。東京高裁から再鑑定結果を通知された弁護団は顔を紅潮させ、
無実を訴え続けた菅家受刑者(62)はDNAの鑑定の結果、無期懲役の
受刑者から晴れて無罪を勝ちとった。その後、大分県別府市の雑木林で
昨年9月、温泉巡りをしていた神戸市垂水区の看護師、横手宏美さん(当
時28)の他殺体がみつかった事件で、迷宮入りかと思われたこの事件も
DNA型が被害者の衣類に付着していた唾液(だえき)か汗とみられる体液
と一致したほか被害者の携帯電話のSIMカードを抜き取って自分の携帯
電話で使っていたことが分かり、県警は安藤容疑者の逮捕に踏み切った。
さらに古い事件として、平成9年3月、東京都渋谷区円山町にあるアパート
の1階空室で、東京電力東京本社に勤務する女性(当時39歳)の遺体が発
見された。発見し通報したのは、このアパートのオーナーが経営するネパー
ル料理店の店長であった。死因は絞殺で平成9年5月、警視庁は殺害現場
の隣のビルに住み、不法滞在(オーバーステイ)していたマイナリを、殺人事
件の実行犯として強盗殺人容疑で逮捕した。マイナリは捜査段階から一貫
して冤罪を主張。当初は、ありふれた殺人事件と思われていたが日本を
代表する大企業のエリート女性社員が売春を行っていたこと、無罪になっ
た外国人を釈放せず拘留し続けたこと、DNA鑑定の真偽に問題がある
こと、検察による証拠隠しの疑いなどにより裁判史に残る事件となった。
結局、この事件も第三者の東京高検が再度DNA鑑定を実施。その結果、
遺体から採取された精液から検出されたDNAは先述のマイナリのものと
一致しないものであることが判明し、現場に残された体毛と一致することが
わかったとマスコミで報道されましたが、これについて検察側は複数の状況
証拠を覆すものではなく、被害者は不特定多数の男性と性交渉をもっており
精液付着の時間も不明であることから犯人が別にいることを直接示すもの
でもないとして無期懲役の罪は確定されたという後味の悪い結果となりまし
た。さて、被害者の女性は慶応大学経済学部を卒業した後、東京電力に初
の女性総合職として入社。未婚のエリート社員であったが、後の捜査で退勤
後は、円山町付近の路上で客を勧誘し、売春を行っていたことが判明する。
被害者が、昼間は大企業の幹部社員、夜は娼婦と全く別の顔を持っていた
ことで、この事件がマスコミによって興味本位に大々的に取り上げられ、被害
者および家族のプライバシーをめぐり議論が喚起された。当時このエリート
社員の上司だったひとが現在の東京電力の最高幹部であるというオチの
事件ではありますが、なぜこの女性はガリガリに痩せて毎夜、街角に立っ
て春を売る商売をしなければならなかった事情は未だになぞに包まれてい
るそうです。まあ、いたずら好きな神さまが、知らぬ存ぜぬとシラを切る輩
の魂胆を寒からしめた事件なんですが、後先考えずにナニに及ぼうとする
まえに唾液とか指紋とか残さずにジッコーする覚悟が必要になったという
教訓を暗示した事件の数々でありました。ああ面倒だ。
    青春の時期は、いつの時代でも恥多く悩ましいものだ。
    もう一度やれといわれてもお断りしたい  吉行淳之介
                       以下同文 ぐっさんハイ