博多のど真ん中にあるホテルで、飲酒運転事故多発を誇る?福岡県とし
てなんとしても撲滅せねばということから私も、その現場に駆けつけました。
といえば格好良すぎますが、先日亡くなったキャンディーズのスーちゃんこと
田中好子さん主演の映画「O(ゼロ)からの風」がみたかったので、決起大会
が終わった頃、会場にはいりました。するとワイシャツ姿の大勢のひとが出
てきましたので、あたしゃ、予定が変わって、もう終わったのかと思いました
ら、そのセレモニーのために動員されたひとたちが公務につくためか退場し
ていたんです。しばらくして坂本九ちゃんの「上を向いて歩こう」の曲が流れ
てきました。福岡県警の音楽隊が演奏していました。数曲演奏が終わりまし
たら塩が引くようにギャラリーがいなくなり、私のような暇人が3割か4割ぐら
いになってしまいました。場内が暗くなり、2ヶ所のスクーリンで07年に劇場
公開された「O(ゼロ)からの風」が上映されました。あの愛くるしい好子さん
が画面に登場しました。アンパンみたいなふっくらした顔も健在でした。スト
ーリーは7年前の春、実在の鈴木共子さんの一人息子は早稲田大学に入
学。一週間後、無車検、無保険の車にはねられ即死。加害者の男は免許
失効中。しかも泥酔状態。3度目の事故だったにもかかわらず「業務上過
失致死」と処理され、刑期は当時で最高5年。刑の軽さに疑問を感じた彼
女は、おなじ思いを抱く仲間たちと共に街頭に立ち、約37万人の署名を
集め、刑法改正に動き出した。翌々年、努力は実を結び「危険運転致死傷
罪」の新設を遂げた。ひと口でしゃべってしまえば、ああそうかという話にな
ってしまいますが、街頭で、こめつきバッタのように頭をさげ手製のチラシを
通行するひとに配っている姿に感動し、飲酒運転撲滅のキャンペーンを展
開する記者の後押しもあって、すこしずつ理解を得ながら世論が動き出す
ところは思わず”好子さん頑張れ!”と声援したくなるようなシーンでした。
国会のセンセ方の尽力もあって車の殺人の凶器と認定され悪質な犯行を
繰り返す輩を震え上がらせることになりますが、好子さんの言によれば凶
悪な犯罪者こそ、再犯するそうですね。そうしてムショからわずか3年3ヶ月
で出所した加害者が鈴木さん宅を訪れて、土下座して謝るんです。市橋被
告のようでした。そうして彼女は”絶対にあなたを許さない。でも、あなたが
私たちが催している生命のメッセージ展にきて遺族の思いをみるのなら許
さないけど、あなたを認めるかもしれない”といいます。すると男は”私は逃
げません、絶対に行きます!”と啖呵を切るようにいいます。また市橋被告
を思い出したシーンでした。でも現れませんでした。新聞記者は”それは鈴
木さんが厳し過ぎたからだ”といいます。ヘンにやさしい世論に迎合した言
葉でした。すると彼女は”心のない言葉はゴミと一緒だ!”と言い放ちます。
私は身を縮めながらスクーリンを見上げていました。そんな彼女は悪戦苦
闘の末、息子が入学した早稲田大学にチャレンジして見事入学を果たしま
す。いやぁ、ここでも女性、、いや母親は強しと思いました。旦那にも先立た
れ、自分ひとりの戦いが、正義感あふれる記者を動かし、おなじ境遇の遺
族をひとつにし、車も凶器と認めさせた執念に私はしばらく席を立つことが
できませんでした。あたしゃ、もぬけの殻になった会場で”やらせ”みたいに
動員されたひとたちには形式的なセレモニーより、好子さんの鬼気迫る映
画をみせたほうが啓蒙されると思いました。
命とは君が使える時間のことだ 日野原重明
代読 ぐっさん拝