カミサンにいわせますと、今流では老いらくの恋とはいわないそうで第二の
青春というんだ、と蔑んだ目でみられてしまいました。ある雑誌に91歳の男
と82歳の女が、そろそろ人生の終いを考えようというときに、思いがけず恋
の炎が燃え上がることがある、そのきっかけは”終の棲家”の老人ホームで
の出会いから。また本屋で店員に追い払われるようにしながら書きとめたも
のをお届けいたします。諸兄も、もちろん私も”もうオレはお終いだ”なんて
気の弱いことをおっしゃらずに第二の青春なるものをエンジョイされたら如
何でしょう(ちょっと、あんた持つものをもって、ナニがちゃんと機能するよう
なひとの話でしょ)。また、余計な邪魔がはいってしまいましたが、無視して
先にいきましょう。大正8年生まれ、御年91にして、かくしゃくとしたTさんと
昭和3年生まれの82歳、笑顔が可愛いNさんのカップルを紹介しよう。
ふすま一枚で自由に行き来ができる通称「夫婦部屋」と呼ばれる個室で
暮らしている。交際歴は10年というから、もはや恋愛達人の域だ。長年連
れ添った夫婦にしかみえない。Tさんは妻を亡くし、この施設に18年まえに
入所。個室で暮らしていた。そうして10年まえおなじ階の部屋にNさんが入
所してきた。Nさんもすでに伴侶がいなかった。隣近所のよしみで「何という
こともなく」交際がはじまったという。Q:どちらが先に好きになったのですか?
Tさん:(照れながら)そんなんじゃなしに、話をするうちに自然とね。
Nさん:(小声で)優しくてね、、好きなんです。Tさん:もうええ年でな、こんな
出会いがあるとは考えたこともなかった。Nさん:私をものすごく大事にして
くれるんですよ(とはにかむ)。Tさん:まあ、とにかくこのひとは明るいですわ。
Nさん:(笑いながら)千代子さん、千代子さん言うてくれるんです。
私は”Tさん”って。(図に乗った質問者が)”たまには添い寝することも?”
と水を向けたら、Tさん:いやいや、そんなこと恥ずかしくてできん。朝は私
が起こすんですわ。コレ(Nさん)は朝寝坊だから。Nさん:一緒に歌ったり
Tさん:コレはね、声がいいんです。聞いてると子供が歌っているみたい。
あとはテレビをみたりね(Nさん頷く)。私は時代劇が好き。チャンバラ映画
だ。仲代達矢とかいいね。このひとは里見浩太郎が好き(と一緒に笑う)。
Q:楽しそうですね。Nさん:それはもう(といって笑い転げる)。Tさん:毎日
楽しいですよ。やっぱりひとりと違ってね。話し相手がいるから。ひとりで
おったら寂しいですよ。Q:ケンカしたことは?Tさん:したことない、僕が怒
ることはあってもね。コレは反発せんから。亭主関白だ(と笑う)。Nさん:い
いえ、そんなことはないんですよ。優しいんよ(と微笑む)。まだまだお惚気
は果てしなく続きますが本屋から叩き出されそうなのでこの辺で割愛させて
いただきますが、どうやら仲良くやっていく秘訣はひとの話を辛抱つよく聞く
ことと気遣いが優しさやボケ防止に直結しているような気がしましたな。
円満な夫婦 どちらも二度目とか ぐっさんハイ