きものコラム「棋士と和服」 | 大賀屋呉服店7代目「いいきものがかり日記」

大賀屋呉服店7代目「いいきものがかり日記」

創業220年目を迎える岡崎市の呉服店7代目。新聞記者(企業取材)➡コンサルファーム➡着物屋で現在。スポニチ、中日新聞,地元ラジオ局など掲載歴多数、各種講演も実施中。主に岡崎市内の出来事や日本文化、老舗経営や映画について書いてます。趣味は映画鑑賞、読書、将棋

伝統文化の世界では和服が必要な分野が数多く残っています。日舞、歌舞伎、茶道、弓道などの古典芸能をはじめ、意外なところでは、小倉百人一首などの競技かるたも男女ともはかま姿です。今回はそのなかでも異彩を放つ将棋界のお話し。最近は漫画「3月のライオン」や電王戦の開催でにわかに脚光を浴びていますが、その内実は、年にわずか4名しか誕生しない最も厳しいプロ制度をもつ芸の世界です。



将棋の世界には7大タイトル戦というものがあります。現在は読売新聞主催の竜王戦が開催されていますが、こちらの優勝賞金は4300万。名人戦と並ぶ最高棋戦となっています。番頭は指すことはめったにありませんが、学生時代にアマチュア3段位を持っていて、たまに棋譜を眺めるたび、とんでもない知能レベルの戦いに驚嘆の声をあげ、ときに嘆息を漏らしています。



将棋には様々な形式美があります。床の間の和室に座布団、盤面を挟んで脇息を置くなどの外観はもちろん、駒の並べ方にも流派があること。正座姿で扇子を持つこと。対局開始時の一礼にはじまり、投了と呼ばれる降伏の儀礼、立会人制度の存在、封じ手など、独特の風習があります。その白眉がタイトル戦における和服姿だとおもいます。棋士も普段はスーツ姿ですがタイトル戦だけはほぼ100%和服対局です。


知見の狭さ故か、この方たち以上に和服を上品に着こなす男性集団を他に知りません。第一人者の羽生善治名人をはじめ、第17代永世名人谷川浩司氏、最年長名人記録を持つ故米長邦雄氏ら歴代名人らの着こなしは、気品と風格に満ち溢れれています。



では、呉服屋はその着こなしの度合いをどこで判断できるのか。これは明らかに暗黙知に属するもので、言語化するのは難しいのですが、強いて表現するならば、「居ずまい」「佇まい」という凡庸な一言につきます。お茶の世界にも通じるものですが、上質の高い着物、しっかりとした着付けをすればよしという世界でもありません。すり足での歩き方、姿勢の正しさなどの作法はもちろん、物事に没入できる無心さ、その人の持つ雰囲気、人格、周囲環境との調和など総合的な要素が溶け込んで出来上がるものです。


いまや男性の和服姿というのも珍しくなりました。でも20代でも、70代でも大切な対局時には、和服に身を包んで10時間以上盤面に没入している。そんな芳醇な精神世界がまだ残っていることに、伝統世界の奥行きを感じます。愛知県内でも、タイトル戦の公開対局などが頻繁に開催されています。また、岡崎公園・能楽堂では毎年春にトップ棋士を招いての将棋まつりが開催されます。将棋の知識などなくとも、一流棋士が持つ風格と佇まいに圧倒されることでしょう。(浩)

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