生演奏も大好きですが、生ビールも大好きです。新鮮なお刺身と生酒は最高です。あと生で見る「お芝居」はテレビとは比べ物になりません。めったに見る機会はありませんが、舞台から伝わる息遣いはリサイタルを目指すものにとって、たいへん参考になります。

 役者さんの練習は、テレビでしか見たことがありませんが、滑舌よろしく、何回も発声練習をしています。この辺りも音楽と「ごっつい」共通点があります。発声練習はフルートで言えば、ソノリティの練習にあたるのかと思います。フルートだけでなく、弦楽器、管楽器とも様々なジャンルの演奏練習の情報についてアンテナを高くして、興味を持っておくことは上達のコツかもしれません。発声練習は「響きそのもの」を作る作業ですから「ア-」という単音でもよいですし、フルートで言えば「芯にあてる」練習目的があります。しかしながら、エチュードを含む楽曲となると、目的の設定がたいへん重要になります。バンドのパート譜であっても同様だと思います。

 かつて吹奏楽部の指導をしていた時のことです。朝から晩まで「練習しなきゃ!」っとコンクールのパート譜を一生懸命練習する。気がつけば何時間も経っている、まじめな部員さんほど、このような練習をしてくれました。今では、とても申し訳ないことをしていたと思います。それは、部員たちに「めあて」を持った練習をさせず、曲の奥にある音楽的意味の面白さに気づくという「音楽的自立」をさせなかったことでした。具体的にいうと、そこに高さを示す音符がある→その指を覚える→ピッチのあった音を出す→タイミングよく出す→せいぜい強弱をつけてみる・・・・今にして思えば何と「非音楽的」な作業かと思います。それでは「何が」いけないのか。お芝居の練習の話に例えてみます。台本に「このラーメンごっついうまい」というセリフがあったとして(こんなのしか思い浮かばなくてすみません)役者さんが、このセリフの練習をするとき、「このラーメ」「ンごっつ」「いうまい」と区切ることはしないと思います。これぐらいの文なら「ちらっ」とみて、台本から目を離し、自分の言葉として「演じよう」とされると思います。先ほどのパープルの文字で書いた練習風景がまさに「変な区切り」といいますか、演劇では「ありえない」練習風景です。それでは、どんなフルート練習が、よくできたお芝居の舞台練習みたいになるのか考えてみました。

 次の楽譜はフルートの有名な「ケーラーの33のやさしいエチュード」です。エチュードには様々な意図ある「めあて」を設定することができます。練習者が最初にやらなければならないことは「どの部分を取り出して練習するか」です。いわゆる台本の「このラーメンごっつい旨い!」が、どこからどこまでかを見極める習慣をつけることです。曲の中の文章でいう「文」「文節」「単語」に当たる部分を抽出するような感じでしょうか。

 仮に「この部分」に「フレーズ感を感じさせるように強弱をつける」という「めあて」を設定します。

 

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 保科洋先生の指揮法講習会に参加して確信したことですが、フレーズを形成するグループは文と文節の関係にあります。適切なクレッシェンドとデクレッシェンドでフレーズ感を、出すという「めあて」を立て、成果があがるまで、その「部分」を「練習」します。練習は「めあて」があって初めて練習となります。朝から晩まで「めあて」なしに吹きまくって、全く得るものがない、とは考えたくありませんが、少なくとも本番のステージで最高の演奏ができる可能性からは遠ざかると言えます。さらに(あくまで私の経験上の事です)「めあて」のない練習には、「面白くない」事実がつきまといます。練習者が体力や楽器の都合、技量の都合で繰り返し練習を「してしまう」と、癖や習慣が濃縮されます。この癖を治すのにまた長い年月をかけてしまうこともあります。経験者語るです。

 響きを創ったり、芯にあてるトレーニングは別にして、音が複数あれば、そこにはエネルギーの流れが発生します。高橋成典先生は「音は常にどこかの音に向かってるんだよ」とおっしゃいました。どこにどう向かっているのかは、楽器の練習だけでなく、曲のつくり、そのものをさらに勉強していいく必要があります。

 ごちゃごちゃ書いてしまいましたので、具体的にどんな練習をすればよいのか次にまとめます。

1 曲の最初から最後までざぁーっと流す練習は「全体を通す持続力の確認」「全体像をつかむ」や「ホールの響き」「部分練習では予想できないトラブルへの対処」などの目標をもってこそ意味があるが、無目的では「失うもの」の方が多い。

2 目的に応じた部分(単語、文節、文)を抜き出して、自分の言葉として「稽古」する。

3 抜き出した部分は、楽器で吹く前に「声を出して歌ってみる」とさらに良い。

4 抜き出した部分は、できれば暗譜で、最初できなくてもそのうち暗譜で(だってお芝居の人も最後は台本見ませんから)

5  ここでいう「暗譜」は、目的が「覚えて吹く」でなく、「分かる」事です。

6  楽譜を見る時は2小節あるいは1小節先を覚えて、今出した音は「瞬間に暗譜した」楽譜のものである事。

7  良い演奏を参考にすると、早く「部分」の意味もわかりますが、最後は自分の言葉で。

 

なんせ目に見えない音楽を「自分にわかるように」言葉として残すのは難しいです。でも、このブログを書いたおかげで、今日、これからの練習の方向性がより鮮明になりました。

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