ダルトン・トランボは思想犯として刑務所に入れられて、すっかり考え方まで変わってしまった。
そんなトランボには、こみ上げてくる思いから噴出してくる言葉があって!ダルトン・トランボは、その感情を言葉で表現しようとしている。
そんな気持ちを表現するたの言葉探しが、彼のものを考えている姿かも知れない。
それは極めて個人的な動機で考えている。
昔は、そんな感情を言葉で表現するためには、多くの知識と教養が必要だったけど!
今は便利でパソコンでピッタリな言葉は簡単に見つかって、アッという間に考えはまとまっていく。
論理的な思考力はパソコンが手伝ってくれる!
必要なのは、こみ上げてくる感情だけ!
トランボは、感情が歪んでしまう程の問題を抱え込んでしまった。
彼は政治犯として国からも存在を否定されて、アイデンティティーを見失ってしまった。
彼の感情は怒りと敗北感で歪んで!しかし彼には知性があって、自分の知性を確認することで自分のアイデンティティーを、かろうじて保つことができたのかも知れない。
彼の中で[破壊と創造]が始まって、固定概念のようなものが、そもそも無くなっている。
彼の考え続ける動機は、存在を全否定されて!
しかし自分の知性に居場所を見出していたのかもしれない。
ただ、トランボは『ローマの休日』の様な夢物語を空想して自分自身を癒しても、結局最後の最後はハッピーエンドがイメージできない。
負のエネルギーに、押しつぶされそうになっている。
『パピオン』のような絶望的な脚本しか書けない。
しかし彼が脚本を書き続けたのは、負のエネルギーからの逆バネがきいて、彼のイメージ力が活性化する瞬間も多かったからかも知れない。
自分の国から政治犯扱いをされて、押しつぶされそうなっている!
しかしギュッと上から押せば押すほど、風船の空気は反発力を増していく。
彼が何かをイメージしている時!
何か思いつく時!
それは、怒りだったり!
『ローマの休日』のような夢物語だったり!
そんな風船内の空気圧は、かなりのエネルギーだったのかも知れない。
しかし、ほとんどの人は『ローマの休日』をシンデレラ物語として見ている。
「トランボにとって自分の気持ちを理解してもらえなくても、それで成功なのかもしれない。」
彼が自由に空想している時、それは現実は見ないようにしている、現実逃避だったり!
しかし!現実から逃れられなくて、現実を壊したいという心理だったり!
『ローマの休日』は、見たくない現実に上書きしたい!違うものに変えたい!そんな必要に迫られた心理状態から生まれているのかも知れない。
そんなダルトン・トランボの心理を裏読みすると『ローマの休日』は、夢物語ではなく、気持ちは重くなってくる。