何か先週に続き古内東子さんネタ繋がりで他に新しいネタはないの?って言われそうだが、今回のネタは実は昨年2月から温めてきた内容だ

東子さんデビュー30周年記念ということで、今年も第4コーナーを回り始めたあたりで東子さんネタを固め打ちするのも悪くないな、という身勝手な思いつきで、過去に書き出したネタの蔵出しという、今回は手抜きの上尾太郎なのである

 

さて、古内東子さんファンに限らず多くの音楽ファンならば一度はタイトルや曲のメロディを耳にしたことがある、先週の当ブログで取り上げた代表曲「誰より好きなのに」

疑いの挟む余地のない名曲だが、実は東子さんも過去の何かの機会に歌詞の2番により思いを込めている的なことを言っていた記憶がある

それはそうだ、歌詞が物語だと置き換えれば、ちゃんとストーリーは初めから終わりにかけて進んでいくのだから、より後半に盛り上がる展開を綴るのは当然だ

プロローグ的な1番の歌詞は細かな設定を描写することよりも漠然とした男女2人の関係を表すことに徹しているので聴く時代を問わないのに対して、より叙景的にその関係を説明する方向に舵切をした歌詞2番については、昔から聴きこんでいるファンはともかく、例えば平成以降に生まれた世代で新参者のファンの多くの人が見慣れない、聴き慣れない場面展開で少し躓いてしまうことが容易に考えられる

つまり、その最大の原因は次の一片が2コーラス目のサビ前に流れるからである

 

「受話器片手に理由考えて」

 

果たして、今違和感を感じずに耳にスッと入ってくる適切な置き換えの歌詞とはどんなものが考えられるだろうか、全く余計なお世話だが、それが今回のブログのテーマである

 

同じことを想像をした方もいるかも知れないが、次の例のようなチープな手直しは正直いただけない

 

「受話器片手に」→「スマホ片手に」

 

この改変はスマホでの会話率が令和の時代、どれだけ需要があるだろうという感覚から既に違和感たっぷりだ

該当フレーズの直前に鎮座する「どうしてもあなたの声を聞きたくなると」という2番Bメロのストーリーの出だし、切なさを交えた心情を綴るこの表現を取り替えない限り、どう考えてもこのシチュエーションを現代に置き換えると「受話器による直接会話」に変わってSNS経由で文字を打ち込む状況を想定しないと話が進まない

更に、SNSを活用している多くの方が経験している通り、今の時代では受け手の誤解を招かない文字情報の表現がかなり重要になっているが、昨今のこの辺りの事情も書き換えの落とし所として大きなヒントになるだろう

言い換えれば、テキストを受け取った側も、一覧して受信直後に感じた印象が果たして正しいものなのか、時間をかけて検討することが今の世では少数派ではないと思うのである

すなわち、ここは大いに「理由を考える」時間を長くするべきなのであり、言葉は変えてもこのニュアンスはできる限り残したいと考えた

 

では「理由考えて」に繋がるベストフレーズとはなんだろうか?

テキストを受け取った相手の気持ちを害さない言い訳を適切な文字列で繰り出せるか、これが勝敗を決するポイントなのであるから、恐らく以前も同様のシチュエーションが有って、失敗を含めた場数を踏んでいて、勝利の方程式的なお決まりフレーズが彼女の引き出しにはそれなりに仕舞ってあることにする

以上を踏まえて、ディティールは別として、この場に並べるべき適当なニュアンスを含めた字面とは以下のようなことだろう

 

「いつも同じフレーズ(コトバ)打ち込んで」

言いたいことは大体こんな感じではないだろうか?

あとは全体の流れに馴染む、もっと洗練された言い換えができるかどうかである

 

「前と同じ訳(ワケ)を呼び出して」

予測変換機能という文明の利器が作動する絵面を結果想起させる少し洗練された言葉に置き換えたのがこれ

しかしこの部分のメロディに冒頭から乗せてくる「受話器」と同じ圧のインパクトを与える単語は、オリジナルを極力意識しないようにしても、早々考えつかない

 

「打ち込んで」にしても「呼び出して」でも、なんかメロディに乗らないし即物的というか美しくないんだよなー

と熟慮に熟慮を重ねた結果、もっとオリジナルを活かしつつ捻りだした叙景的な表現が次の表現だ

 

「コトバ、並べて理由考えて」

 

「並べて」とは発話でもテキスト交換でも違和感のない便利な表現だし、後半のオリジナルを加工していないから収まりがよい

 

実は次の「途切れる会話の中でこの気持ちに」の箇所も「受話器…」の改変問題と並行してとても気になっていたのだが、存外「コトバ」「並べて」というチョイスのお陰で以前ほどは気にしなくてもいい感覚に変わってきた

つまり「会話」という単語に実際の発話の他に「テキスト交換」という意味を持たせると無理がなくなると考えるようになったからだ

 

 

以上、ソングライター初心者、上尾太郎の腕前はいかがなものだろうか?