昔吐き気をもよおすほど食べられなかった食い物が、いつの間にか抵抗感が薄れて、好物までとは行かなくても何とか口にできるようになった経験は誰にでも少なからずあると思う
今尚割と偏食家を自認する俺の場合、パクチーもその一つだ
何が原因となったか全く記憶には残っていないが、そもそも以前から香草全般の鼻につく独特な風味が嫌で、中でも春菊は冬場の鍋に登場した際は器内のメンバーには絶対に入れない天敵である
そんな俺とパクチーに関する転機は昔ベトナムに出張に行ったとき、せっかく来たのだからという消極的理由で現地のフォー専門店に行き、添え物として無制限に食べられるパクチー入りフォーに恐る恐る箸をつけてみたら、拍子抜けする程意外にすんなり食べることができた出来事である
加齢とともに味覚のセンサーが減少する、食の経験値が上がり食わず嫌いのハードルが下がる、などの外堀的な要因の変化はあるが、食わず嫌いの看板を下ろして過去のトラウマと対峙する勇気がいつでも引き出せる訳ではないから、やはり上述のようなタイミングの問題が大きいと思われる
さて、パクチーとのその後の付き合いだが、好物ではないし普段気軽に食べられる食材という訳でないのが逆に自分の中でプレミアム感が高まることになり、最近はたまに食べたくなって提供してくれる店へわざわざ足を運ぶという絶妙な距離関係を構築している
これからもこういう「記憶味変」みたいな展開が果たして訪れるだろうか?