三人の50代女性の、それぞれの、老親の介護の悩みは、誰の身にも起こりそうなことです。

 

主人公の三人は、専業主婦、助産師だった母と暮らす看護師、病気とは縁のなかった両親を持つ独身介護士ですが、それぞれ、複雑な介護の悩みを抱えます。

 

そういった家族の危機に、夫婦や兄弟が支えあっていけるかどうかが問われます。社会のあり方も考えさせられます。

 

実父の介護に奔走する主婦に、夫と姑は、冷ややかです。娘すら味方してくれません。

長年、支えあった母が倒れたとき、失業し転がり込んできた弟は、介護に不熱心で、中年の引きこもり生活を始めます。

実父の病死によって、引越しを迫られた娘と老母は、長年、かわいがっていた老犬を処分するよう新しい大家に言い渡されます。

 

介護以上に、家族や周囲の理解を得られないことで、主人公らは

孤立感を深めていきます。

そこには、従来、クローズアップされることが少なかった、高齢者が抱えるペットの問題なども織り交ぜられ、新しいと思いました。

 

介護に疲れ果てた主婦を、林真理子は冷徹な目で、「優しい人が負けるのだ」と分析します。

 

その通りなのです。優しい人だけ苦労するのです。

 

老親を放っておいても、「何とかしてくれるだろう」という人は、現実に背を向け、自分の生活のペースを崩さずに過ごします。

 

それでは、介護に窮する「優しい人」は、損なのでしょうか?

 

物語の中で、それぞれの「優しい人」は、ただ、損な人ではなくて、成長し、強く生きていく姿を描いています。

困難な暗いテーマの中にも、苦労や努力ののちに、得られるものがあるという作者の前向きなメッセージが込められているように思いました。