NHKで放送されているプロジェクトXを視ていているといろいろと思うことがあります。開発の苦労・継続することの苦労など日の当たらないところで無名の市井の人たちが血の汗を流してきた数多くの物語。正直なところ新シリーズは最初のシリーズから言うとネタ切れ感があるのですが、それはそれで(笑)。
例えばゲストの誰かが言っていた「今は当たり前のことが、元は何もなかったことから始まった」というニュアンスの言葉。これで思うのは、今では当たり前のインターネットをはじめとした通信技術の進化。私がアメリカに赴任したほんの45年前、当時は仕事上のメッセージの交信はまだテレックスというタイプライターのような電話回線を使った通信機を使用していました。時間ナンボの国際電話料金で文字数がこの時間に反映されて料金が増減しました。まあこれが今のeメールの役割をしていたわけです。とはいえ、いかに必要な情報をより少ない文字数にするかが経費削減になるので、事前に推敲しながら穿孔テープ(分かるかな?)を作成してそれを国際電話料金が安くなる時間になるのを待って発信するということを毎日やっていました。タイマーがあったかも知れませんがうろ覚えです。日々の情勢によっては直前まで起案することもあったのでいつも難儀をしました。具体的に文字数を削減というのは、例えば「至急ご返事ください」というのは「UN HN K」と打ちました。翻訳(笑)すると「ウナ返請ウ」、まあ電報文から来ているのですが、海外からだとアルファベットなので短縮のために母音を抜くわけです。この辺りの言葉遣いは彼我の担当者同士で暗黙の了解があったので私のような新人だけが独特の言葉遣いを理解するのに苦労したのですが。ということで私くらいがテレックスを知っている最後の世代といえます。
これが赴任2年目くらいにファックスが導入されまして、はじめはそれが何なのかも知らなかったのですが、導入されてみたらまあ手で書いたものがそのまま送れる。機械(商品)のトラブルも複雑な内容をややこしい説明をしなくても絵に描いたらそのまま送れる、そりゃもう本当に夢のような機械に思えました。当然時差を考える必要もなく夜の残業ルーティンもほとんどなくなり、かなり快適な生活を送れるようになってありがたかったのをよく覚えています。なによりも情報の精度が「UN HN K」の世界とは比較にならないわけで仕事の質も一変しました。
それが今ではインターネットの普及のおかげで、かつて魔法の機械だったファックスなんぞ過去の存在になっているわけですから考えてみればびっくりですよね。最近のいわゆるZ世代の若者はどうかするとファックスの使い方すら知らないというのが現実です。かくいう私自身も最後にファックスを送信したのが何年前になるのか思い出せないくらいなので仕方ないとは思いますが。パソコンが個人に普及し始めて30数年、この間のITがらみの世の中の変化はそれ以前の産業革命を含めた過去数百年の変化を上回るものではないかと思うのですが、逆に言えばこれからの未来を生きていくにはこのスピードで変化する世界についていかなければいけないということで、それはそれで新しい当たり前がすぐ当たり前でなくなるというのはしんどいだろうなぁ、という思いもあります。私はもう70前の老人なのでそれほどの影響は受けずに済むだろうとは思うのですが、子供たちや孫たちはねぇ。でも孫を見ていると2歳児や3歳児くらいでも私よりはるかに自然に親の携帯を操作していますので、彼らにとってはこれが当たり前なんでしょうね。
海外に住んでいる娘の生活でも、まずテレビは衛星放送で日本のキー5局は全部視られるし(国内でも宮崎県だと未だに民放は2チャンネル、山陰でも3チャンネルと、5局受信できる県は案外少ないというのに、です)、ネット環境さえあればいつでもどこでもLINEとかで無料電話やテレビ電話をしてくるし。当然日本の情報はリアルタイムで入手できるしと、物理的に海外に住んではいるものの情報的には国内と変わらないです。40年前はこんなに不自由だったと言っても笑い飛ばされて終いです(泣)。えらい世の中になったものです。
2週間くらい前の大山(だいせん)と烏山(からすがせん)