抱いてもらっている時はとても幸せで、

胸がいっぱいで、

不安や怖さが全部消えていったように思うのに。


過ごしていくうちに、静かに、少しずつ、黒いものが私の心を埋める。

それがある時いっぱいになってから気付くのです。

「私はもう限界なんだ」ということに。


毎日、こうして仕事場で会えるようになって、

逆になにかを失ってしまったように思う。

虚勢を張っていなければ、関係ないよって顔していなければ、

そうしていなければ…私は直ぐに崩れてしまうのです。


素直に言うと約束したのに、

私は結局あなたには何も言えなかった。

あなたは言わせてもくれなかった。


ただ一言、

それとも優しく差し伸べてくれる手があれば、

まだ大丈夫で居られたかもしれない。


あなたの顔色を窺ってしまう私は…

云いたいことを隠して、だんだんと溜め込んで、真っ黒になって、

嫌な自分になって…落ち込んで…。


あなたはあの時、私の反応を窺うために逢いたいって言ったんでしょう。

私に逢いたいからじゃなく。


どうしてメールをくれなくなったんですか?

毎日メールが欲しいと伝えた時、「わかった」と言ってくれたのに。


あなたはいつも、あんな長い時間あの場所に居て、一体誰とどんな話をしているのですか?

私や会社の仲間には言えない弱音を、どこで誰に話しているのですか?


どうして奥さんと逢ってもいいよ、と平気で言えるのですか?


私はあなたのなんなのですか?

彼との出逢いは、

かれこれ2年程前のこと。


私が勤めていた会社に、

彼が面接にやってきました。


それまでも何人か面接に来ていたのですが、

なかなか採用までなる人は居ず…


なのに、彼を見た時、私は直感で思いました。


「この人、絶対にここで働く」


彼が帰った後、

私はそのことを仲間に話しました。

「さっきの人、絶対にうちで働くことになるよ」と。


別に身なりが飛びぬけてよかったわけでもない、

年齢もこれまで面接に来てた中から言えば、上のほう。

今考えても、インスピレーションみたいなものです。





私は…これから先もきっと忘れないと思う。


あの日、

彼が会社を訪ねて来て、

私が社長の元へ案内する時、


足早だった私は、彼が付いて来てるか、後ろを振り返った。


彼はマイペースに空を見ながら付いて来ていた。


あの時の彼の表情。


今から言えば、好きなところは幾らでも挙げられるけど、

恋に落ちたんだとしたら、

まさにその時だったんだと思う。

火曜日と木曜日。


それは彼が、私か誰かと逢う日。


だから約束のない火曜日と木曜日は、

早めに眠る。


早く過ぎ去って欲しい。この1日が。