『泥の薫り』 泥の薫りでむせかえる 初春の昼下がり 露でぬれた下草が靴底を支えている わずか数尺の距離なのに 随分遠かった 青葉が顔を出した泥の裂け目 いくつも作った泥団子 今日のは出来がいいと顔もほころぶ 縁側の下の蟻地獄の巣は どうなったろう どこにでもあった泥たまり 即席の堰はすぐ切れた 長靴の中はじゃぼじゃぼいっている にわか雨にうたれたら おうちが恋しくなりました