『怒りの炎』 | 洋風文芸館(旧時計台)”おにょにょの館”

洋風文芸館(旧時計台)”おにょにょの館”

大正時代に金沢市を見下ろす卯辰山の山麓に時計台が建築され、洋風文芸館として今に残っています。文芸館の管理人”おにょにょ”は映画や文学、ときに音楽をこよなく愛する奇妙な生き物です。このブログはその”おにょにょ”が愛する作品達を、備忘録として残したものです。

私の奥底にどす黒く燃える炎がある

いつ燃え始めたのか記憶はない

凝り固まった怨念のように決して消えることがなく燃えている

それは怒りの塊のように強く激しい


私が春のうららかな日にほがらかな顔をしていようとも

初夏の朝に人生の喜びを感じていようとも

秋の午後に色づいた町並みに浸り、過去に思いを馳せて涙しようとも

冬の深夜、降り積もる雪をわけて祈りをささげようとも

私には消しても消しても、消し去ることができない怒りの炎が燃えさかっている

炎は生け贄を常に求めている

隙あらば燃やし尽くす相手を待ち構えている

牙をとぎ獲物をねらう


この純粋で残忍な感情が燃えさかるとき

私にはどうすることもできない

陽がのぼり、そして沈むことを止めることができないように

炎が燃えさかることを沈めることはできないのだ

人はいう

人を恨んではならないと

人はいう

人を憎んではならないと

人はいう

人に復讐してはならないと


善悪と遠く離れた土地で

炎は際立ち、いっそう勢いを増して燃え上がる