生まれた時は幸せだった
まっさらな状態でうつくしかった
無垢というgenuineなproductに他ならない稚児こそが
最上の状態なのだ
私は多くを経験して大人になった
人を殺したことはない
魂を殺したことはある
いくつの魂を傷つけて私は成長したのだろう
返り傷で私の魂も傷だらけだ
それは多くを経験した成熟した人間のそれでなく
ただすり切れて薄汚い薄っぺらいその程度のものだ
苦労をすれば人間ができると世間はいう
それはまやかしであり幻想なのだ
あれだけのことを経験すればと支えにしてきた
これだけやればと心の糧にもしてきた
しかしそれは魂にゴミがついた程度の物でしかなかったのだ
絶海の荒野で呆然と立ち尽くす私は
たった一人でちっぽけなどうしようもない存在だ
転回点を見いだすこともできず
転向しようにも舵も帆も風もない
いずれ死は来る、それまでは
憐れな野良犬となって残飯でもあさろうか