黒い木立が葉を落として、髪を逆立てるが如く突っ立っている
雲海は折り重なり、細い枝はこれを切り取って一枚の風景画とした
冬の彷徨は渦巻いて、彼の不安を煽る
おまえにはdestinationもidealizationもない
無論、dogmaもidentificationもない
筏に乗って大洋に一人漕ぎ出せばわかるだろう
おまえは孤独である
記憶も忘れてしまって、守ることすらできない
今は生きぬくだけで精一杯である
恐れは無いはずなのに漫然とした不安はなんだ
おまえを内側から食い破る
不安は不安を糧としておまえを圧倒する
そんなとき自らを生け贄として差し出せ
祭壇にはらわたを供えるのだ
散らばった記憶を集めたっていい
だが忘れるな
血したたる臓物をみて
いつも命の本質をかみしめるのだ