静かな静かな一日が終わった
窓から見える公園のベンチには
雪がこんもりと積もって
電灯の青白い光を照らし返している
昼間は其処が
赤い衣装とおそろいのピンクの毛糸の帽子と手袋を
まとった小さな女の子で
際立った
夕方に宅急便が訪れてミカン箱を
一つ置いていった
開けると東京の両親から兄の形見分けのコートと
おそらく隣町で買ったのであろう
高級チョコレートが同封されていた
以来、外でも内でも物音一つしない
方々でじゃありじゃありやっていた
雪掻きも済んだようだ
電灯ひとつついた人気のない六畳一間で
外の音ならぬ音に耳を傾けながら
詩を書いてみる
女の詩でも書こうかと思ったが
いい按配にならないのでやめた
いつも気にかかる存在であるが
詩にあらわすには今の自分が
混乱して言葉にならないのである
過去からの引力と未来からの引力が
つりあった真空のような時間が流れている
こんなとき人生というような漠然としたことを思う
一〇年前、二〇年前、三〇年前にも
同じような時間が流れたが
私は少しずつ変化している
いや私では無く周りが変化したと言うべきか
確かなことは
生まれてから四〇年の歳月がたったこと
兄が死んだこと
両親が老いたこと
詩を書くようになったこと
そして
気になる女がいること
ぐらいである