『かげろう』 | 洋風文芸館(旧時計台)”おにょにょの館”

洋風文芸館(旧時計台)”おにょにょの館”

大正時代に金沢市を見下ろす卯辰山の山麓に時計台が建築され、洋風文芸館として今に残っています。文芸館の管理人”おにょにょ”は映画や文学、ときに音楽をこよなく愛する奇妙な生き物です。このブログはその”おにょにょ”が愛する作品達を、備忘録として残したものです。

男は

ベッドに残った残り香を

嗅いでひとり女を思った

関係性は明らかだったが

あわれな男の末路をたどるような

心持ちに精一杯あがらっていた

女に向かって何を話しても

嘘になってしまいそうな

感じがして

黙って女の話を聞いていた

うるんだ女のまなざしだけが

今にも行き倒れそうな

男を支えていた