『かげろう』男は ベッドに残った残り香を 嗅いでひとり女を思った 関係性は明らかだったが あわれな男の末路をたどるような 心持ちに精一杯あがらっていた 女に向かって何を話しても 嘘になってしまいそうな 感じがして 黙って女の話を聞いていた うるんだ女のまなざしだけが 今にも行き倒れそうな 男を支えていた