『久方ぶりの雨と少しばかりの記憶の共振』 | 洋風文芸館(旧時計台)”おにょにょの館”

洋風文芸館(旧時計台)”おにょにょの館”

大正時代に金沢市を見下ろす卯辰山の山麓に時計台が建築され、洋風文芸館として今に残っています。文芸館の管理人”おにょにょ”は映画や文学、ときに音楽をこよなく愛する奇妙な生き物です。このブログはその”おにょにょ”が愛する作品達を、備忘録として残したものです。

久方ぶりの雨である
室内は湿って底冷えしたが
外へ出てみると
存外あたたかい

こんな雰囲気では
明後日にも
春が訪れそうなものだが
冬はまだ始まったばかりだ

駐車場のむこうに
植わっている欅だか樫だかの樹木は
葉も落とさずに
雨でけぶってくすんでいる

昨日まで
こんもり積もった雪で
地面についてしまうぐらいに
あえいでいた松の木は

今日は
その葉先いっぱいに
雨滴をしたたらせて
元気いっぱいだ

傘にあたる雨音を聞いて
理由もなく
あの夜を思い起こすのは
どういうことだろう

久方ぶりの雨で
あらわれた私は
同じように時であらわれたあの日々と
シンクロナイズしたのだ