これは無事に大ハッピーエンドを迎えたあとの勝手な妄想話です。
おにゃの自己満の世界ですので、本編のような紆余曲折はないと思います。
それを踏まえた上でも読んでみたい、大丈夫という方のみお進みください。
滑走路から飛び立って行った飛行機が、小さくなって見えなくなるまで、牧はその場でずっと見送っていた。
「創一さん、愛してます。」
何も見えなくなった空に向けてそっと呟くと、ゆっくり歩き出した。
牧は嬉しさと寂しさの入り混じった涙を拭いながら、空港の駐車場に停めてある春田の車へと向かった。
ドアのロックを解除して運転席に座った。
つい今しがたまで、隣で慌てふためいていた春田の残像が浮かんで牧の方を見て微笑む、そして…すぅーっと消えた…。
やっとのことで押さえ込んだ涙がまた、ぽろぽろと溢れ始めた。
「そういち…創一…さん…。」
今夜からはあの広い家で一人で暮らさなければならない、それを思うだけでまた涙がとめどなく流れてしまう。
春田の残像が消えたシートの背もたれの付け根に、小さな箱があるのを見つけた。
「んもう、創一さんたら何を落としてったんだよ、まったく…。」
慌てて車を降りたから、もしかしたら向こうで必要な大切な物だったらどうするんだ?
最後までおっちょこちょいで世話がやけるんだから、あの人は…。
なんて事を考えていたら自然と涙は止まっていた。
とりあえず中身を確かめて必要な物なら上海支社に送らなければならない。
手に取ってみると、ジュエリーボックスのような箱…。
(まさか、これ、部長からプロポーズされた時にもらったやつか…?)
胸と頭の中がザワザワし始める。
中を見たくない…でも気になる…部長はどんな指輪を春田に送ったのか…?
葛藤していたが、結局は開けてみることにした。気になってしまったものはハッキリしなければ気分が悪いままになってしまう。
ゆっくりと箱を開けてみた…。
中には小さく折りたたんだメモ。
それを取ってみると、入っていたのは指輪ではなくシルバーのブレスレット。
「…は? 何これ?」
困惑とも拍子抜けしたとも取れるような、腑抜けた声をもらした。
指輪じゃなければ一体これはなんなのだ?
春田がこんな物を付けているのを見たことがない。まさか…また自分の知らないところで、また誰かに告られてプレゼントでもされたのか⁈
「ったく、あの人はまた流されてこんな物受け取ったのかよ…!」
寂しくてめそめそしていた自分はどこへやら、ブレスレットを見ているうちに、イライラと腹を立てていた。
ということはこのメモはラブレターか?
一体どんな奴が口説き文句を書いているのか、気になって仕方ない牧はメモを乱暴に開いた。
「!!!!!!」
眉間にシワを寄せて不機嫌極まりない表情だった牧の目から、大粒の涙がとめどなく流れ出した。その顔は愛おしい物を見つめる慈愛に満ちた表情へと変化した。
メモに書かれていたものは…
『大好きな牧へ。
面と向かっては恥ずかしいから、置いとくことにした。
あ、見つけてくんなかったら最悪〜っ!
えっと、俺が上海行ってる間、俺だと思ってそれ、付けといて!
俺も、同じの持ってっから。
おそろ、ペアってやつ?
俺も自分の見ながら牧のこと、いっつも思い出すからな!
あ〜もう無理だ、照れるわ!
春田創一 』
メモを置き、ブレスレットを取り出して大切に隅から隅までじっくりと眺めた。
よく見るとプレートにアルファベットが刻まれていた。
〝Soichi.H〟
「はるたさん…! そういち! そういちぃ!」
牧はそのブレスレットを取り出し、両手でメモと一緒に胸に抱えて、何度も何度も名前を呼んで号泣していた。
ー 1時間後 ー
「おはようございます、遅くなってすみません。」
牧は天空不動産、第2営業所に遅れて出勤した。
「春田くん、ちゃんと飛行機乗れた⁈」
いつものハイテンションな明るい声で瀬川が駆け寄ってきた。
「無事に送り出せたか?」
続いて声をかけてきたのは武川だった。
「あ、は、はい。」
牧に気付いた黒澤も部長室から出てきた。
「ご苦労さん。」
そう言うと、牧の肩をポンと叩いた。
「いえ…、ありがとうございます。」
顔を上げた牧を見た黒澤と武川は、互いに見つめ合ってすぐに牧の方を向いた。
「ひどい顔だな。」
と武川が言うと、
「かなり泣いたな、目が腫れてるぞ。
今日は外回りはやめとけ。」
黒澤が牧に優しくそう言った。
確かに、鏡を見るまでもない、すでに目が腫れぼったい自覚はある。
「…分かりました。
お言葉に甘えさせていただきます。」
デスクワークをこなし、お昼休憩の時に春田から牧へ、上海虹橋空港に無事到着したとLINEが入った。
着いたら必ずLINEをするようにと言い聞かせていたのを、ちゃんと守ってくれたようだ。
ほっとして胸をなで下ろす。
(よかった、何もなく無事で。)
仕事が終わって、一人でいつかの公園のベンチに座り、改めてブレスレットをまじまじと見返していた。
自分のもらった物には春田の名前が入っているということは、彼が持っている物にはきっと自分の名前が入っている…!
考えただけでも震えが止まらなくなった。
お礼を早く春田に伝えたい。
本当は電話をして声が聞きたい、けれど今朝別れたばかりでなんだか弱味を見せるようで情けなく感じる。
性格が災いして素直になれず、結局LINEを送ることにした。
その文面もやはり憎まれ口を叩いていた。
『お疲れ様です、創一さん。
びっくりしましたよ、創一さんのくせにあんな洒落た事するなんてずるいよ。
まあ、ヘタレな創一さんなら俺に直接渡せないだろうしね(笑)。
仕方ないなあ、付けてあげますから創一さんの持ってる方も大事にしてくださいよ?』
送信マークをタッチした。
春田の『はあ〜っ⁈ んだよこれぇ!』と叫ぶ顔が浮かんできて、思い出し笑いをした。
♪♫ ♪♫
しばらくそのまま腰掛けていたらLINEの着信音が鳴った。
スマホのLINEを開いた。
『はあ〜っ⁈ なんなんだよこれ!
(創一さん、わかりやす(笑)!)
もっと、感動しろよぉ〜〜〜!
俺が上海行った後に、牧の喜ぶ顔思い浮かべながら選んだんだぞ!
…でも付けてくれんならいい!
うん!』
「ぷはははっ。創一さん、かわいいな。」
(ちゃんとした言葉を送ってやるか。)
『嘘ですよ、本当はすごく嬉しかったです。
大切にします。
愛してます、創一さん。』
これを見てデレっとする春田を想像しながら、送信マークをタッチした。
すぐさま既読の文字が浮かび、彼からの熱くて甘いメッセージが返ってきた。
『おれも、おれも、おれもーっ!
あいしてるよー、まぁきーっ!
あ、もとい、りょうたぁーっ♡』
牧はそれを見るなり春田以上にデレデレしている自分を楽しんでいた。
それから数日後。
天空不動産、第2営業所。
受付に座っていた牧に、ひとりの若い男が声をかけてきた。
「あの〜、こちらに春田創一さんという方はいらっしゃいますか?」
初めて見る顔に牧は戸惑いを隠せずに、心臓の鼓動が早くなるのを感じながら、不安な気持ちを隠せず机の下に置いた手で、春田からのブレスレットをギュッと掴んでいた…。
つづく
あとがきのようなもの。
今回も最後まで読んでくれた〝アナタ♡〟
どうもありがとうございます〜。
こんな展開になってきましたが、また続きを書いてもいいかな?
感想お待ちしております(^_^)v
お声が多いと創作意欲がわきます ♪