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―――…

 

「何、これ…」

 

救世主…もといばっちゃんから教えられた住所に来たら

 

大分年季の入った木造のアパート?がそこにあった…

 

俺…これ、なんか知ってる…

昔テレビの再放送のアニメで見た、めぞ〇一刻…あのアパートに似てる…

3階建ての古めかしい佇まいだ…

 

め〇ん一刻なら、美人の管理人さんが居て、その存在分が古さをカバーしてくれる住み心地になるだろうけど…

現実はきっとそうは行かないだろう…

 

木造の玄関口に下げられた表札には「桜井」と書かれていた。

 

インターホンを鳴らす。

 

数分待ってから機械音と皺枯れた老人の声がした。

 

俺が名前を告げると、ブチッという音と共にインターホンが静かになった…

 

しばらく待つと、声の通り不機嫌顔の瘦せぎすでショートカットと言うには短すぎる白髪の老婆が木造の引き戸から顔を出した。

 

期待してた訳じゃないけど、

めぞん一〇は遠退いた。

 

―――…

 

「栄から話は聞いてる。」

 

老婆が開口一番そう言って、付いてこいとばかりに歩き出したので

その後ろを訳も分からず着いて歩く。

この老婆…俺のばっちゃんと同じくらいの年だろうか…

しゃきしゃき歩くなぁ…

栄って誰だろう…てか、この人一体なんなの?

 

不安も相俟って、心なしかスーツケースの重量が増した気がする。

 

木造の戸の中は少し開けた庭のようだった。

砂利道を進むと、目の前には昭和を感じる家…三階建てだ…

サ〇エさんで見たことある磯野家の引き戸そのままの玄関だ…

ガラガラと大きな音を立てながら家の中へ入る。

広い玄関に下足棚があり、ここで靴を脱ぐよう指示された。

 

「あの…今更なんですが…あなたは一体誰なんです…?というか、何なんでしょう?この状況は…」

 

玄関まで入った所でやっと疑問を口に出せた。

 

「はぁ?」

 

老婆に凄まれた…

すごく凶悪な顔をしている…眉間に皺が寄る。表情が雄弁で、面倒だ。と口から言わんばかりだった。

 

「いや…あの、ばっちゃんにここに来るように言われて…それ以外は何も分かってないんですけど…」

 

これ見よがしに老婆はため息を吐いた

 

「…あんたのばっちゃんに頼まれたんだよ。孫の為に部屋を貸してくれってね。たまたまこちらも部屋の空きが出たし、栄の頼みなら断れないからね。」

 

「もしかして、さっきから言ってるサカエってばっちゃんです?」

 

「アンタ、自分の婆さんの名前も知らないのか?」

 

ばっちゃんの名前なんて知らないよ!!!!!!!

ずっと、ばっちゃんて呼んでたし!!!!!

えー!!ナニコレ!!超展開なんだけど!!!!!!!

待って!?え!?俺ここに住むの??

東京に出てきたのに、わざわざこんな時代錯誤な所に?

あ!思い出した!なんか既視感あるな、と思ったらここ建物の感じが本家に似てる!!

うちの山田本家こんな感じ!THE和風の古い家の感じ!!

 

「や、やだー!!!!!!東京に出てきたのにこんな所!!山形と大して差がないボロ家!!」

 

思ってたより大きな声で本音が出てしまった。

 

「は?」

 

老婆の顔が更に、一段と皺が刻まれ凶悪なものになっていった…

本音が出すぎてしまった…どうしよう…めちゃくちゃ怖い…

 

「あ、いや、あの…何ていうか…」

 

老婆が更に睨みつけてきている気がする…

完全に怒らせてしまったようだ…

取り着く島も無いとはこの事か…

あー!!どうしたらいいんだ…

 

…そんな絶対絶命の俺に、またもや救いの手が差し伸べられた。

 

鳴り響いた携帯電話。

 

老婆の顔圧から…その場から逃げるように背を向けて電話に出た。

 

相手は、先ほどの悪徳不動産屋からだった

 

―――…

 

わぁ~!

夢みたい!

 

地獄に突き落とされたかと思ったけど、やっぱり天国だったみたい!

 

悪徳不動産なんて言ったけど、人間の心残ってたっぽい!

 

電話が来た時は、鬼婆から逃げ出せる!やった!くらいにしか思ってなかったけど、

まさか、の不動産屋側の手違い?勘違い?ってことで新しい鍵貰えたし、何より!あのアパートに住めるんだ!

って思ったらスーツケースを引きずる腕もパンパンだし足も歩き回ったせいで痛いけど

スキップしたいくらい気にならない!!

 

またも3階の部屋までスーツケースを持ち上げて息切らしながら部屋に到着!

 

今度こそ…と思いカギを差し込み回す…

 

ガチャ、と金属音がして美しい青色のドアが開いた!!

 

胸躍るとはこの事だ!!

やったー!!ハッピー1人暮らしの始まりだー!!!!!!!

 

 

ドアを開けて足を踏み入れた瞬間。

 

あれ?何だろう?

なんか違和感…

 

いやいや、慣れない都会の部屋にビビったのか!?

まさかね!!

自分に言い聞かせるようにスニーカーを脱いで部屋に入る。

 

目の前はあの外から見えてた素敵な窓がある、でもそこに薄手のカーテンがかかってる

見た感じ薄手のカーテンだけど遮光性抜群なのかな?いや、そうだとしても、この部屋暗すぎないかな?まだ昼14時とかだと思うけど…

一旦電気を付けようとスイッチを探す。

オンにしてみたけど、部屋の照明は暗いままだった

電球が切れてるのかな?それともブレーカーかな?

なんて思いながら、部屋を見渡してみた

 

あれ?テーブルとソファー?キッチンには炊飯器?ケトル…とかも…

家具がいくつかある、見た感じ新しい物のようだ。

家具付きの物件だったけ?あれ?

疑問に思いつつ、ソファーに近づく。やはりまだ買ったばかりのようだ、匂いも新品の独特の匂いがした。

 

…てか、なんか誰か住んでない?ココ?

妙な生活感を感じる…さっきの違和感はコレかも

生臭い…というか湿気?生活臭?体臭?

何だろう…

そもそも空室で明け渡されるハズだよね?賃貸って…?

俺が知らないだけ…?

 

なんか…変だな、

妙な空気感に充てられたせいか、おしっこしたくなってきた。

 

トイレは…っと、ここかな…?

ユニットバスのドアを開け、電気のスイッチをオンにする。

ここの電気は点くようだ…と思ったが点滅している

電球買ってこないとな、と思いながらも足を進める。

点滅した薄暗い明かりの中で見えたものに

 

「ひっ…」

 

悲鳴が出た

 

バスタブに満杯の水が張られている…そこに長い黒髪の毛がたくさん浮いていた…

点滅した照明の中で見えるのも相俟って最高にホラーだ…

 

こ、怖い!!!!!!!!

ヤバい!!!!!!!!!

 

その時背中にひんやりと冷たいものを感じた気がした…

後ろに何かいる…?

 

そう思えてきたら、

怖すぎて、ダッシュしてスニーカーに足突っ込んでスーツケース抱えるようにして部屋を飛び出した。

 

 

つづく