行政改革の真実 | 公務員ってこんなもん。

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ある地方公務員の日常。
仕事もプライベートも、日記を通して公務員の実際をつづります。
なぞの職業「公務員」もこれで完璧?

財政再建会議に出て思ったこと。

まあ、以前から思ってたことですけど。


ご存知のとおり、全国の市町村はほぼすべてが、財政的に厳しい状態にあります。

これは、本来富の偏在を補正して全国どこでも同じ行政サービスが受けられるために、地方に交付される地方交付税が、段階的に削減されてきているためです。

また、夕張市の破綻を受けた財政健全化法によって、赤字を出すことについて、国から監視されることとなりました。

そこでここ数年、多くの市町村が行財政改革に積極的に取り組んでいます。

国から配分されていた地方交付税の減額分を、行財政改革によって削減し、収支を均衡させるんですね。

ここまで聞いたら、行政の無駄をなくして、税金の効率的な運用が行われるために、よさそうな話に聞こえますよね。

ところが、ここに盲点があります。

通常民間であれば、経営が厳しくなったときにまず見直す部分というのは、原材料費などのコスト部分ですよね。
コストを切り詰めて、それでも企業努力では吸収できない場合、最終的に価格に反映させると思います。

しかし行政というのは、利益追求ではなく、単年度で収支の均衡がとれていればO.K.な世界です。
改革をうたっていても、その視野はどうしても近視眼的になってしまいます。

要するに、細かいコスト削減を考えるよりも、一年で大きく歳出削減効果を考えるわけです。

では、全国の市町村で行われている、一般的な行政改革の手法とはどういったものか。

それは、ずばり「市町村の仕事を減らす」ということです。
行政の場合、最大のコストは人件費です。
そこで、どの自治体でもまず取り組んでいるのが、職員の削減です。
しかし、公務員というのは、リストラが制度上できないので、早期退職を募ったり、退職者数に対して、新たに新規職員の採用を行わないという手法をとります。
これによって、職員数を減らして人件費を抑制するわけです。

しかし、新規採用を行わないということは、組織内の人口ピラミッドが自然に逆三角形になってきます。
つまり、実働部分を担う働き盛りの職員が年々減ってくることになります。
さらに、職員数自体も減少するわけですから、それまでどおりの仕事はこなせなくなりますよね。

そこで、これまで当たり前にしていた仕事を辞めていこうということになるわけです。
これが、行政的な言葉でいう「事務事業の見直し」というものです。

ところが!!

この見直しというのは、これまで住民の皆さんが当たり前に受けられていた行政サービスを、なくしていきますということ同じなんです。
もともと行政というのは、無駄が多く、そういった無駄な部分が削減されていくことは望ましいのですが、最近の傾向としては、「国も手厚い福祉から、自助努力に舵を切っているんだから」と、これまである意味聖域であった福祉の分野においても例外じゃなくなってきていることです。
教育についても、同じように例外ではなくなっています。

それも、そうしないと自分のまちが破綻するのならと、受け入れる方もいらっしゃるかもしれませんが、ここでもうひとつの、最近の行財政改革でのトレンドのお話をします。

「新しい公」という言葉を聞いたことがありますか。

これは、これまで行政が担ってきた役割を、住民やNPOが担っていくという考え方で、「都市内分権」という言い方をされることもあります。
この考え方は、とても行政サイドにとっては便利なもので、要するにお金や手間がかかっていたことを、住民側でしてもらおうということです。

考え方によっては、間接自治から直接自治への方針変換と好意的に捉えられるかもしれませんが、実際自分の生活に置き換えてみた場合、仕事から疲れて帰ってきて、せっかくの休みに役所から押し付けられた仕事をこなさなくてはいけないなんて、どう考えても住民が疲れてしまうと思います。

まちによっては、こうしたことに対する受け皿となる組織が立ち上がっているところもあるんでしょうけど、本来こういったことは行政から押し付けるのではなく、住民やNPOが主体となって進むべきものだと、私は思います。

それが、行財政改革に絡んで、概念だけが利用されているのが、今の現状です。

私としては、それよりもまず、直接その効果が目には見えにくいですが、日常事務の無駄を削減して、事務の効率化によって、本来の意味でのコスト削減、人件費抑制を図るのが先じゃないかと思います。つまり、無駄な仕事をして残業している時間を減らし、あるいは効率化によって浮いた人間を忙しい部署に適正に配置することで、サービスを落とすことなくコスト削減が実現できると考えています。

実際、役所っていうところは、これだけ便利な世の中になってきているにもかかわらず、相変わらずマンパワーに頼っているところが多く、これらを機械にさせるだけで、かなりな部分効率化が図れるはずなんです。
それと、世界のトヨタでは、一歩を減らすことでコンマ何秒の削減ができるということを実践しているそうですが、そこまで極端でなくても、事務所内の整理整頓と、動線に配慮したレイアウトによって、無駄な動きがかなり減らせるはずだと思います。
(役所にいくと、大体全国どこでも、とても雑然とした印象を受けますよね)

このような努力なき行政改革は、私は本来の改革ではないと思っています。
でも、これが今の行政という世界での現実です。

以前も書きましたが、住民の幸せを実現するのが行政の役割だと私は思っています。
だから、本来まずしなければならない努力をせずに、住民のみなさんに負担だけを強要するような今の行政(国も含めて)には共感できません。

ただ、私一人が何を言っても、そうそう変わるとは思えません。
当然私ができる限りの精一杯でがんばりますが、それとともに、共感者をまず増やしていく、つまり公務員の意識改革(偉そうですが)から取り組む必要があると感じます。

とりあえず、私なりにがんばります。
一人の力が、いつか大きな力になって、この世の中がもう少し、優しい世の中になる未来を信じて。