元祖東宝飛行怪獣
ゴジラ怪獣で空を飛ぶ奴らは、案外多い。
有名どころではモスラやキングギドラ、2000年代からはメガギラスというトンボの怪獣。
メカゴジラだって空を飛ぶ。大体のメカは飛ぶ。
なんならゴジラ本人もその気になれば飛べる。
見よ、この飛行フォーム。
足と尻尾の位置をキープするのが地味に腹筋に効きそうな姿勢だ。
そんな、空飛ぶ怪獣のパイオニアともいえるのが、「空の大怪獣」ことラドン先輩である。
画像は徒歩で移動している最中だが、もちろんちゃんと飛ぶ。
空の大怪獣 ラドン
ラドンはプテラノドンの突然変異とされる怪獣だ。
ゴジラと比べると華奢な印象を受けるかもしれないが、人類に与える被害は負けず劣らず、甚大なものがある。
何せ、上空をただ飛行するだけで、その翼から生まれる風圧により街を破壊してしまうのだ。
もちろんゴジラも街は破壊するのだが、基本的には移動したルート、前進を阻むものを壊していく。
これがラドンの場合、空からの暴風は広範囲に影響を及ぼし、ビルや家屋を軒並み吹き飛ばしてしまう。
移動するだけで街が崩壊してしまうのだ。
近所に住んでいたら毎回町内会の議題に上がるタイプの住人だろう。
大物新人ラドン先輩
そんなラドン先輩、出演キャリアもなかなかのもの。
まずは単独主演作「空の大怪獣ラドン」で華々しい銀幕デビュー。
東宝初のカラー怪獣映画というメモリアルなところをきっちり抑えてくるあたり、会社にもプッシュされてる感がある。
その後は昭和ゴジラシリーズにゴジラの相棒的ポジションで出演を重ねる。
残念ながら二作目の単独主演作には恵まれないが、着実にキャリアを積んでいく。
残念ながら昭和シリーズ後半では出番がなくなっていくが、平成に入ってから再びスクリーンに復帰。
復帰作「ゴジラVSメカゴジラ」では気合が入っていたのか、体のカラーリングを赤色に変え、光線を吐くという新たな特技も習得している。
残念ながら主役でも敵役でもない脇役だが、終盤にはゴジラのピンチを救うなどきっちり見せ場をもらっている。
と、時を経るごとにだんだんと扱いがぞんざいになっている感じもするラドン先輩だが、デビュー時にプッシュされた影響からかきっちり活躍の場は与えられている、というちょっと気を使ったような状況が続いていたのだ。
事務所社長の肝煎りでデビューしたが、いまいち当たらなかったアイドル女優みたいな感じだ。
新天地で土下座する先輩
そんな燻ぶり気味のラドン先輩だったが、「ゴジラ キングオブモンスターズ」でついに海外進出を果たす。
ワンシーンだけちらっと出て、「海外デビュー!」なんていう恥ずかしいやつではなく、ガッツリ大事な役どころだ。
劇中ではモスラ、キングギドラに続いて火山の中から出現。
風圧で街を吹き飛ばす、往年のデビュー作を彷彿とさせる活躍を見せる。
このまま、ゴジラ、モスラと合流して、キングギドラとの最終決戦かと思われたのだが、一足早く単独でキングギドラと会敵してしまう。
そして、あっさりギドラに打ち負かされてしまうのだ。
ここで物語からは退場かと思いきや、今作のラドンの見せ場はここからである。
次の登場シーンでは、山頂で吠えるキングギドラの足元でひざまずいているのだ。
というよりその姿勢は、日本的感覚で言えばほとんど土下座である。
一瞬で勝負が決まったことにショックを受けたのか、ここからラドンはすっかりキングギドラの腰巾着に。
いい調子で街を破壊していくのだが、ここにゴジラ、モスラが見参。
ラドンはモスラと空中戦を繰り広げるが、ここでもあとちょっとのところで敗北。
しかし致命傷を受けたわけではないので、間をおいて再び戦うのかとおもいきや。
ギドラとゴジラの勝負が拮抗しているのを受け、がっつり日和見の体制に入るのである。
さらに終盤、勝利したゴジラのもとに他の怪獣たちが集い忠誠を誓う中、ちゃっかりラドン先輩もその輪の中に。
一応、集まったほかの怪獣に比べればだいぶ先輩なので、ちょっとゴジラに吠えてみたりするのだが、ゴジラに一喝されてしまう。
そして、二度目の土下座である。
一本の映画の中で二回も、しかも違う相手に土下座する怪獣が今までいただろうか。
劇中時間でも、一度目の土下座から二回目の土下座まで、ざっくり考えても24時間は過ぎていないはずだ。
一日二土下座である。ラドン先輩のメンタルは大丈夫だろうか。
ベテラン怪獣、キャラ変に成功す
とまあ、駆け足でラドンの経歴をまとめてみたが、振り返れば海外デビューで一つ殻を破った印象を受ける。
鳴り物入りでデビューしたがその後大スターにはなれず、それでも一応仕事もあるし目立つ場面もあるという半端な立ち位置だった昭和期。
平成では多少新しい面も見られたが、やはり突き抜けられず。
それが海外デビュー作において、いままでの怪獣になかった新しい個性を獲得した。
ゴマすり怪獣である。
ゴジラファンの間ではすっかり「ゴマすりクソバード」の愛称が定着した。
ちなみにこの愛称はとある全く別のアニメが元ネタだ。
つまり、怪獣映画とそのアニメの視聴層がかぶっているということだ。
もちろん僕もそのアニメは観ていた。
一期で泣いて二期で怒ったクチである。
ともあれ、今までのちょっと扱いにくい先輩から、一気に親しみやすいキャラクターに生まれ変わったのは個人的にも嬉しかった。
やっぱり今までのラドンは孤高のイメージが強く、カッコいいけど堅物なところがあったのだ。
・・・などと考えつつ、改めて初期の出演作を思い返したのだが。
わりと昔からこんな感じだった。
便乗しがちな性格は元からのようである。


