名句に聞く「春の音」 | 日本語好きな人、寄っといで

名句に聞く「春の音」

 春の海 ひねもすのたり のたりかな 
 春なれや 名もなき山の 薄霞


 どちらも春を詠んだ与謝蕪村の著名な句ですが、けだるくのどかな春のただずまいが、春らしい「音」を使って見事に表現されているのがわかります。


 春の感じをことばの音で表すには、響の強い破裂音(パ、タ、カ行音)系の音をなるべく使わず、のどかさや暖かさを作る摩擦音(サ、ハ、ヤ、ワ行音)や鼻音(マ、ナ行音)、流音(ラ行音)(濁音と拗音を含む)を多く使うことによって生まれます。
 両句の場合、これらの音がどれほど使われているかを見てみましょう。

「春の海」・・・は、る、の、み、ひ、ね、も、す、の、り、の、り、な
(17音中13)
「春なれや」・・・は、る、な、れ、や、な、も、な、や、ま、の、す、す、み
(17音中14)

 どちらも、音相論を意識して詠んだと思われるほど、これらの音が多く使われているのがわかります。


 ある雰囲気を表現したいとき、このような音が作るイメージへの配慮を忘れてはならないのです。
 これは文章や詩やネーミングや普段の会話などにも通じる、ことばの裏にある隠し味なのです。