日本人が嫌う音 | 日本語好きな人、寄っといで

日本人が嫌う音

 片仮名書きされた外国語が日増しに増えている現代ですが、日本人がこれら外国語とどんな姿勢で向き合っているかを知っておくのも大事なことのように思います。
 日本語の音韻の中で育った私たちが外国語の音を聞いたとき、それを日本語風の音韻に読み替えて、その語のイメージを作ります。そのため、日本人の好みに合わない音というのがいろいろあるのです。
 そういう音をいくつか拾ってみました。


1.息の長いことばを好まない
     ……「デパ地下」はなぜヒットしたか

 英語、ドイツ語、ロシア語など子音で終わる音節の多い閉音節の言語では、音の抑揚(メロディー)を大事にし、語や文の長さはあまり気にしませんが、1つ1つの音節が母音で終わる開音節語の日本語では、拍(音節)の進行が作るリズムを大事にしますから、息の長いことばを好みません。  
 「省エネ、マスコミ、デパ地下、なつメロ」など4~5拍の省略語が増える理由がそこにあるのです。
 そういうことから、1語の長さはなるべく8拍以下でおさえる工夫が大事なのです。


2.語末の長音は好まれる
     ……カレーライスよりライスカレ-を好むわけ

 開音節語の日本語では長音が語末にくると安定感が生まれるため、語末に長音をおく語が多く見られます。
 私が新聞の社会面に出ている単語の語末の拍を調べてみたら、814単語中2155語(26%)…が長音を使っていました。
 日本人は、「カレーライス」より「ライスカレー」の方に雰囲気的な安定感を感じるのです。
日本語のそういう特徴を知っていた一と昔前の人たちは、外国語を片仮名書きするとき「コピー、フリー、ブローカー、ウォーター、カー、セーター」のように語末の長音を残す配慮をしていましたが、最近は何の理屈もなく語末の長音を切り捨ててる風潮が見られます。


 【語末の長音をカットした例】
 データー → データ   シアター →シアタ
 コンピューター → コンピュータ   センター → センタ   
 モニター → モニタ   シティー → 徳陽シティ銀行
 エヌ・ティー・ティー → エヌ・ティ・ティ

 整然たる秩序の上にできている日本語を、わけもなしに壊してゆく、こんな悲しい流行を放っておいてよいものでしょうか。


3.新子音の入ったことば
     ……「フィ」や「ドゥ」がなぜキザに聞こえるのか

 新子音とは、外国語の音韻が多量に流入した第2次大戦後、日本語の中で広く使われるようになった「ヴァ行音、ファ行音、ウァ行音、ティ、トゥ 、ディ、ドゥ音」やそれらの拗音をいいます。
 耳新しい音だけに西欧風のモダンさやイマっぽさがあるためネーミングなどに好んで使われていますが、日本人はこれらの音に「言い難さ」からくる不快感と、よそよそしさやキザっぽさを心の底で感じていることを忘れてはならないのです。


 今回は以上、3つの例をあげました。
 これらは日本人には不自然さやぎこちなさを感じる音ですが、そういう不自然さを逆用して効果を上げている語も少なくありません。
 例えば「ジョンソン・アンド・ジョンソン」や「ストラディバリウス」のように長拍化することで存在感や高級感を表現したり、「フェラガモ」「ティファニー」「ルイ・ヴィトン」のように新子音を使ってエキゾティシズムを作る例などです。だが、これらを有効に使ってコンセプトを表現してさえいれば、それも優れたネーミングなのです。
(木通)