近松門左衛門、七、五調の秘密
浄瑠璃作家、近松門左衛門の作品は多くが道行き(心中)物で、その種の作品は100に上るといわれていますが、私が近松に感動するのは、「音数律」の美しさを究極まで追っていると思えるところです。
近松の物語は、7音、5音のつなぎで文章が展開しますが、七、五調が作る単調さを救うため、次のような種々の工夫がそこにあるのがわかります。
1、脚音とそれに続く頭音の間や、頭音と次の頭音に、ほとんど同音が重複しない。
2、ところどころに[脚韻]が入る。
「この世も名残、夜も名残…(曽根崎心中)」
3、「物づくし」(縁語)がある。
「たった一飛び梅田橋、あと追い松の緑橋…後にこがるる桜橋」…
(心中天の網島)
4、異常に高い音読みの勁輝拍がところどころに鏤(ちりば)められている。
「寂滅為楽(「曽根崎心中」)、衆生済度(「心中天の網島)…
5、変則
そして、これらの中に「相合炬燵、相輿の‥」(冥途の飛脚)のような頭韻の反復や、字余りなどを交えて、絢爛たる変化を作っていることです。
近松を愛する人は、これらはすでにご存知でしょうが、近松の音数律を拍(音節)から、音相基の単位に下げて観察すると、また新たな面白さが見えてくるのです。
(木通)