「表情」はどこから生まれるのか
ネーミングの専門家たちの間で「濁音は暗い音だから語頭におくのは禁物だ」などと言われています。
だが、「バヤリース・オレンジ」「バイタリス」「バズーカ」「ギア」「ディオール」など、好評といわれるネーミングの中で濁音を冒頭においた例が数え切れないほどあるのをみても、こういう言い方には個人の特殊な経験や好み…主観が大変多くはいっていることがわかるのです。
濁音には「暗さ」ばかりでなく、「落着き、重厚感、豪華さ、優雅さ、穏やかさ、暖かさ」などもあるのです。
また、「アは明るい音」とよく言われますが、「ア」には「穏やか、無性格的、無責任、どんなところにもアダプトできる音」などの表情がありますし、「イ」にも「明るく、強い音」と言われているほかに「鋭さ、小ささ、異常さ」などの表情ももっています。
このように、音の一つ一つは多くの音相を持っているうえ、他の音の表情と響きあって新しい「表情」を作る場合も少なくありません。
また、清らかさをきわ立たせるため、清らかでない音を前後に配する工夫がされたことばも多いのです。
音相論は、そのようなことばの表情を整理して体系づけた理論なのです。
(木通)