ビールの音相と人気について | 日本語好きな人、寄っといで

ビールの音相と人気について

明るい商品イメージ 重厚な言葉使い表現


 ことばの音の明るさや暗さを測る尺度として、「総合音価」というのがある。明るさや活性感のあることばは一般に総合音価がプラスとなり、ゴージャス感、重厚感や暗いイメージのものはマイナスを向くのが通例だ。


 ビールに対して多くの人が抱くイメージはスポーティー、庶民的で明るい感じのものだといえようが、そのネームを分析するとマイナス指向のものが大変多いことがわかる。この商品を明るさの方向からとらえたものに総合音価+B1の「一番搾り」がある。このネームは語音の強さがきわめて高く(H10)、八種類の調音種をすべて使い、輝性の揺れも+- +-と上下に大きな振幅を作って活性的で明るい響きを強く打ち出しているのが一見できる。一番搾りはこれまでのビールのネーミングの傾向を大きく方向転換させたところに人気が出た隠れた理由があったのではないかと思われる。
 ビールという商品のイメージをマイナス指向(ゴージャス感や重厚感)でとらえることはそのコンセプトから見てやや無理があり、他によほど優れた要素がない限りネーミングとしての成功は難しいといってよいだろう。

 また「スーパードライ」と「キリンラガー」はいずれも輝性の揺れにプラスを入れて語のマイナス化をカバーしており、ともに優れたネームであることがわかる。
 次にゴージャス指向のものの中には-B9の総合音価を持つ「ビア・ヌーボー」が光っている。輝性(語の明るさ…Bの値)の高い三音をすべてマイナス方向に抑えたうえ、調音種比を低めて厚みのあるゴージャス環境を作っており、マイナス指向のネームの中でとりわけ豊かにそれを表現していることがこの表からわかる。


(日経産業新聞ネーミングNOW 1990.11.21)