「IT」という語の不思議な魅力 | 日本語好きな人、寄っといで

「IT」という語の不思議な魅力

 大衆が好んで受け入れるネーミングに二つの種類があるようだ。
 新しさや物珍しさで訴えてくるものと、今一つは商品が持つイメージを語感の響きで表現しているものである。前のほうは珍しさを感じなくなると人気も自然薄れてゆくが、後者のものは長く使ってゆくにつれその味わいが深まってゆく。古くから息長く人気の続いている製品、ブランド名などがその例だ。

 「IT」(情報通信)は血の通わないアルファベットだけでできたことばだが、この語はあっという間に何の抵抗も無く全国へと広がった。
 そのような語はほぼ例外なく音の響きの良さを持っている。響きのよさとはことばの音が作る表情の良さのことだが、「IT」がどんな表情を持っているかをコンピューターで取り出してみた。
 この表から「IT」が「鋭さ、特殊感、シンプル、活性的、合理的」などを高点で持ち「愛情、やすらぎ、大衆性」などを持たない語であることがわかる。
 そのことは、この語が情報技術が持つ高い科学性や先端性を的確な音で表現していることを示している。人々がすんなり受け入れたのも、語音が作る表情への共感があったからだと言えるのだ。また、コンピューターはそのような表情が生まれた根拠として、この語が調音種や母音の種類が少ないこと、響きの強い音節や異常感を作る母音「イ」が多いことなどを取りだしている。

 このように、ことばの音が伝える「表情」(イメージ)を身近なことばを使って取り出したり、それが生まれた原因などを明らかにするのが音相分析法である。(木通)

(日経産業新聞ネーミングNOW  2000.09.12)