自分でも驚くほどに、亮と会話をしている間冷静でいられた。
なんだかんだで結局、現実を思い知らされて泣いたりするんじゃないか?と、予測していたのだが。
電話を切った後、なんとも言えない爽快感と、喪失感があった。
今までの時間は一体、何だったのだろう?
長い時間の中で、確実な人間関係を築いてきたと思っていたのに…
自分の全てを否定されたような、誰からも必要とされていないような…そんな想いがした。
けどこれで、終わりにできる。
これで、解放される。
そう思った時、失った恋を美化する思いも、未練も何も残っていなかった。
結局のところ彼は、自分しか守れない男なんだという事がよく分かった。
いざと言う時に、他人を気遣う優しさなんて持ち合わせていない男。
他人より、自分が大事な男。
本当にイイ男と言うのは、大事なモノを絶対に守る。
仕事や忙しさを言い訳にはしないはず。
仕事が忙しいのは、皆同じ。
自分だけが忙しいと思っているその器の小ささが、側に居る女を不安にさせる。
彼と出逢った頃、皆で飲んでいる席で何度か、彼が目に涙を一杯溜めながら飲んでいたのを思い出した。
後日聞いた話しでは、その涙は離婚が原因であるとの事であった。
今やっと、その涙の真相とリンクした。
彼は、離婚して手放した子供や妻を思って泣いていたのではない。
離婚によって傷付いた自分が可哀想で涙を流していたにすぎない…。
これが、音信不通彼氏の実態。