2013年8月
私は迷っていた。
結婚願望のないこの男と、いつまでも付き合っていて良いのか…??
でも、だからってそんな簡単には別れられない…好きだから。
葛藤しながらレンと会い続けるのが苦しくなっていた。
そんな時、久しぶりに亮からメールがきた。
たまには飲みに行こうや!!
レンへの後ろめたさもあったが、気分転換になればと思い、メールがきたその翌日、亮と飲みに行く事にした。
亮の行きつけの焼き鳥屋へ行き、いつも通り他愛ない話しをしながらお酒を飲んだ。
前に亮に会ったのは年末。
久しぶりに会っても、昨日会っていたかのように会話が弾む感じが心地良かった。
私やっぱり、この人が好きだ!!!
そう、思ってしまった。
何度でも蓋をしてきた想いであっただけに、きっかけさえあれば火がつくのは簡単な事だと、今なら理解できる。
焼き鳥屋を出た後、亮はバーに連れて行ってくれた。
その日はいつも通り最終のバスで帰るつもりで居たが、バーに行く前の段階で、もうバスはなくなっていた…
もちろん、そんな事はどうでも良かった。
結局その日は、朝まで亮と一緒に居た。
バーが閉まった後、2人して公園で夜が明けるのを待った。
都会の夏とは違って、夜になるとひんやりとした風が心地良かった。
その日以降、レンへの葛藤は一切無くなり、むしろ再び火がついた亮への恋心で胸がいっぱいになった。
何処で何をしていても、亮の事ばかり考えていた。
毎日していたレンとのメールのやり取りも、あの日を境に徐々に途切れがちになっていた。
レンは私の急変に気付いたかどうかは分からないが、私には何も問い詰めるような事はしなかった。
そんな状態のまま1ヶ月ほど過ぎた頃、さすがにレンへ別れ話しを切り出した。
私は結婚がしたい、だから結婚願望のないあなたとはもう会わない。
そんなような事を伝えた。
今思うと実に、身勝手な話しであった。
俺には結婚願望がないから。
と、レンは別れを受け入れてくれた。
その時もレンは、私に何も問い詰めなかった。
ただ、少しだけ目に涙を浮かべているように見えた。
別れ話しの末の涙を見せた男は、私にとってレンが初めてだった。