科学的根拠は乏しい放射能泉
今回は、妊婦の禁忌に次ぐ、一般的に言われている効果・効能の見直しに関するの学会発表についてご説明させていただきます。
すでに、最新の学会論文の中に書いてあります…。
といっても、すごくマイルドで、わからない程度、もしくは、学会に出席するレベルの人々には当然すぎてスルーする事実をお知らせします。
概要だけ全文をすでにブログにしました。あまりにも短く、専門的なのでご解説をしていると長くなっているという事情です。
放射能泉はご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、色もにおいもない、肌触りも普通の湯とそれほど変わらないと感じられたと思います。1)
温泉のありがたみもあまり感じられないような湯でラジウム以外の放射能性物質を含む有馬温泉、強酸性の玉川温泉など、他の強烈な個性がないと普通の単純温泉のような穏やかな性質の温泉です。
時間が経つと、じんわりと効いてくる、悪いところが少し痛いような気がする、という入浴感もご経験されている方も多くいらっしゃるかと思います。
温泉分析表を見ると、意味不明の数字や単位、いわくありげな効能書きに戸惑う人が多いだろう。
温泉医学の解説書でも、「微量の放射線は人体によい影響を与えるとの説もあるが、科学的根拠は乏しい」とバッサリと切り捨てている。
中には「尿を介して尿酸を排出することから痛風の湯という」としながらも、入浴による効果なのか飲泉の効用なのかは不明なものもある。
温泉ソ〇リ〇の公式サイトや最新の温泉湯治ガイドでも目に付くのですが…。
放射能泉は「痛風の湯」というのは、とても古い知識です。
10年前以前には、「効果なし」と検証結果が出ています。
もし、信じていらした方がいらっしゃれば、認識を新たにして頂ければと思い、その流れについて詳細これから掲載させていただきます。
痛風はお湯を飲むだけでも効果があるので、放射能泉の飲泉に効果があるというのは少し違うということであったりします。
しかし、全否定ではなく、今回の学会発表でも、
新規適応症として~「高尿酸血症(痛風)」~などの可能性を明らかにした。
と表現されています。
湯に浸かり三日目の朝には病が消える
「湯に浸かり三日目の朝には病が消える」が三朝温泉の名前の由来です。
株湯はその三朝温泉発祥の地で、開湯以来、850年続く公衆浴場として今でも現役で使用されています。
神の使いである白狼を射らずに逃がした源義朝の家臣が、楠の株の下に源泉があるので、人々をいやすようにとご神託を賜った起源の場所に今も温泉が湧いているのです。
45-6℃のとても熱い源泉掛け流しの公衆浴場で長時間入っていられません。
初心者や少し興味のある一般の方には、飲泉か足湯がおすすめです。
マニアな方は、ぜひ、一度公衆浴場の方の入浴も試されてみてください。
放射能泉にはとかく不明瞭な点が多い1)ということで、研究者が研究し続けていることを一般のガイドや温泉地の現場で効能には書けないため、古くから言われていることや、一時期流行った、都合の良いことが記載されたままになっているのは、市場経済において当然のことと思われます。
各地の温泉郷は生き残りをかけて、生まれ育った地元にある源泉を守り続けているはずだからです。
想像に難くありません。
日本は被爆国であり、放射線の危険性は強く意識されている。しかし、地球上どこでも自然環境からの放射線が存在しているので、放射能泉に入浴することによって特別に強い放射線を浴びるわけではない。
微量の放射線でもからだにとって害になるのか、逆にむしろ生体機能を活性化する効果があるのかについては、以下に紹介するようにいろいろな議論があり、いまのところ決定的な証拠はない状況である。
ゆえに、生活がかかっている温泉郷の人々にとって、ラジウムがからだによい、という研究成果が発表されたことはとても喜ばしく、発見者のキュリー夫人の像も建立されたというわけだと思います。
それでも、今でも解明されていない部分は多いのです。
※効能は万人に対してその効果を保証するものではありません。
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温泉療法の情報がより詳しく解説されているブログのご紹介です
お国自慢と温泉研究の今 — 昔はあった6大学温泉医学研究所①
お国自慢と温泉研究の今 — 放射能泉は「痛風の湯」?③
お国自慢と温泉研究の今 — 放射能泉の鎮痛効果と坑道療法④
お国自慢と温泉研究の今 — 放射能泉の温泉分析書⑤
9種類の療養泉の効能 — 二酸化炭素泉/炭酸水素塩泉/塩化物泉
9種類の療養泉の効能 — 硫酸塩泉/鉄泉/硫黄泉/酸性泉/放射能泉/単純温泉
4つの温泉水含有成分の生体作用
もしよろしければ、こちらもご高覧いただければ幸いです
本日は最新の放射能泉、ラドン泉の論文に関するお話をさせて頂きました。論文というのは絶対というものではなく、常に疑われ、新しい説が出てくるものも当たり前のことです。
特に、温泉医学の領域では、あーだ、こーだ、そーでもない、こーでもないと、あちらこちらでいろいろな説を肯定したり否定したり、実際のところ頼れるものは民間療法の延長で確立された伝統的な入浴法であったりすることもあります。
医学の方が勝ることももちろんあるのですが、経緯とその魅力から発展したとは断言できると思います。
放射能について詳しい実態がキュリー夫人によって発表されるまでは、神がもたらした、人々を癒すご利益のある奇跡の出湯であったわけです…。
これからも、温泉療法医としての目線で、健康づくりに役立つ様々な温泉医学情報をご紹介していきたいと思います。
セルフメディケーションの時代、ぜひ、日常にお役立ていただけましたら幸いです。
本日はご訪問・ご拝読頂き、誠にありがとうございました。
今後とも、よろしくお願い致します。
1)温泉と健康(2009)阿岸 佑幸 p.114-115, p.123, p.118-119
2)CREA 2019 vol.350 2・3月号 p.126 左下 鳥取県 no.84 三朝温泉 三朝薬師の湯 万翠楼