第二次世界大戦の最末期、昭和20年8月8日。
ソ連は日ソ不可侵条約を反故にし、対日宣戦布告。
翌9日、満洲に進撃。
その数150万人の大侵攻となった。
とある開拓団の一家は、敗走する関東軍の後を追い、朝鮮を目指して逃走した。
しかし、関東軍はソ連の追撃を阻むため、橋梁、道路を破壊しながら南下。
つまりは、開拓団員の退路を断っていったのだ。
かつて、二束三文で農耕地を奪われた現地中国人の遺恨が噴き出し、満州各地で暴徒化する。
開拓団員が片端から襲撃されていった。
追う者も追われる者も
皆
裏切り者
真夜中の豆満江、崩れ落ちた橋桁や車輌の陰に淀み転がるのは、水に腐す骸の姿。
青白い月明かりが川面の波の端に沿って、焼け焦げ、ひしゃげた四肢や腹を撫でては退いていく。
朝が来る前にここを渡り、対岸にたどり着かねばならない。
河岸で、少女の素足が踏み抜いたものは、泥人形のようになった見知らぬ誰かの腹の底だった。
焦げた腹は腐って膨れ上がり、少女の足の裏で滑るように捲れると、泥の中のような感触が伝わってきた。
土踏まずに刺さるものがある。
それは微かに軋んで、ひとつ、千切れるように外れた。
背骨だった。
痛い!
痛い!
痛い!
それは、誰の叫び声だったのだろう。
・・・・・・
「マンジュバザール」とは「Manchuria bizarre」を捩った造語です。
歌の背景をぼやかすためにこのタイトルを通称とし、歌詞も永らく非公開にしてきました。
「マンジュバザール(奇怪な満洲の夜)」には、歌も詩も遠く及ばない。
2.マンジュバザール
ここは満洲 マンジュバザール
追う者追われる者 皆
裏切り者 裏切り者
片肌の合の裾から
おかしな色の月明かり
滑り込む 滑り込む
青く揺れる御霊の手が伸びる
泥を枕に眠る者たちの
おかしな色の腹を
裂いていく 裂いていく
青く揺れる御霊の手が伸びる
朝がくる前にここを渡ろう
捲れた腹を踏み抜いて
背骨が足の裏で外れる音がした
痛い 痛い 痛い 痛い 痛い
ここは満洲 マンジュバザール
追う者 追われる者 皆
裏切り者 裏切り者 裏切り者
えどにしきライブアルバム
【あなたの孤独をひとりで逝かせるな】
定価1,500円
弾き語りシンガーソングライター【えどにしき】主宰のレーベル【金魚鉢レコード】のショップで好評発売中。
悲しみに暮れた心を紡ごう
美しい糸に巻き上げよう
鋭い針に糸を通して
破れた心を縫いあわせよう
痛みに打ち克つ覚悟はあるか
1.沈みゆく舟
2.マンジュバザール
3.アハハア
4.トドメゲキ
5.始発のない駅
6.午前三時の警笛
7.音無川心中
8.エラーコイン
9.崩れるかもしれない
10.空色ビオラ
作詞・作曲 橋本 豊
歌・ギター えどにしき
録音 高円寺ALONE
マスタリング 井上博之
題字 書家・中村万光
イラスト なにがしら あろん
デザイン・構成 高橋和也
ⓅⒸ 2020 Kingyobachi Records【KINGYO-001】