あけましておめでとう御座います。本年も宜しくお願いいたします。

令和2年最初の修理は、ヤマハ  No.U1(昭和40年製造)です。休みボケも少し残る中、解体・掃除をして全ての弦を脱弦します。

「駒」と呼ばれる部分です。弦の振動を共鳴板に伝える役割を担います。弦の振動エネルギーそのものは非常に小さいので駒の役割は重要です。
そして重要なことを後一つ二つ程。

弦を張った状態ですが、駒上面の黒い部分は弦の水平方向の高さより数ミリ高くなっています。
弦圧と言いこれにより張りのある力強い音になります(圧のつけ過ぎ、少な過ぎは禁物。何事も程々に)。画像は高音部ですが、全音域に平均的に圧がかかる様に調整後、弦を張っていきます。
そして後一つ。

張られた弦が、駒に植え込まれた駒ピンによって左右に曲げられているのが分かりますか?駒ピンが駒に対して垂直では無く斜めに植え込まれる事により、弦の張力を上げると必然的に駒上面の黒い部分に弦が密着します。
弦圧、駒ピン、張力 これらの力で小さな弦のエネルギーを数倍もの大きさに変換しています。

テコの原理等、普段の生活の中でも身の回りに「知恵」は散見されます。計算から導かれた結果では無く膨大な試行錯誤、或いは閃きによって生み出された数々の「知恵」がピアノの中にも有ります。上の画像で説明した事もその一つかなと思います。
今年もそれらを発見し、一人感心しつつ修理、調律に励みます。
【ブログを御覧になった「知恵」さん、もしいらっしゃったら呼び捨てみたいに何度もすみません...】


皆さま、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

新たな年のはじめに、今年の目標や抱負を決められた方もいらっしゃると思います。
先日お客様が調律後に弾いてくださったのは『きらきら星変奏曲』でした。
この方が習っていらっしゃる先生は弾くこと以外にも、作曲家の事や歴史、当時のピアノ、調律の事などを掘り下げて教えてくれるそうで、レッスンはとても楽しく、長く続いているそうです。
子供の頃とは違い、味わいのある演奏になるのは、知識や弾く方の様々な経験からなんだな、といつも感じます。
という事で、私の今年の目標の1つは気持ち良く弾ける曲を増やすことです✨


今日は小野ピアノ年末恒例もちつき&仕事納めでした。
今年も皆様のおかげで充実した1年になったのではと思っております。
来年もどうぞ小野ピアノをよろしくお願い致します。
それでは皆さま、良いお年を。


ピアノの白鍵、剥がれてしまったり欠けてしまったりすると、演奏時に指や爪を引っかけてしまい思わぬ怪我につながりかねません。

もしこんなことになってしまった場合は、ご自分でなんとかしようとはなさらず、調律師にご相談くださいね。

今回は、鍵盤修理の一例、白鍵アクリルの貼り替え方法をご紹介します。

まず、交換したい白鍵の表面を剥がします。
熱を加えることでキレイに剥がれます。

その後、表面をサンドペーパーなどで整え、貼るアクリルを準備します。
アクリルは鍵盤の形よりわずかに大きく作られています。
それを専用の接着剤でしっかり接着します。

接着剤は、アセトンに白鍵剤のアクリルを溶かしたものですが、この接着剤を使うことが大切です!
白鍵剤と同材のものになるので、接着後鍵盤との間に異素材が入らずキレイでしっかり接着できます。(他の接着剤で自己修理された鍵盤の修理は、剥がす段階で厄介になります(>_<))
また、接着剤の濃度も大切で、濃すぎても薄すぎても上手に仕上がりません。
白鍵と同材を溶かしている接着剤ですので、貼る白鍵の表面に接着剤が付くと白鍵表面も溶けてしまいます。
表面に付かないよう慎重に木部に一定の厚さで塗り広げます。
そしてアセトンは揮発性が高いため素早い作業が求められます。

木部に接着剤を塗ったら、用意しておいたアクリルを正しい位置で圧着します。わずかに大きいだけなので、雑に合わせると簡単にズレてしまいます。何度も手直ししていると圧着する前に乾いてしまい接着できません。

慎重に、手早く、正確に作業します。


専用の治具(ジグ)で楔(クサビ)をかけて圧着


圧着後、治具から外します。

治具から外した鍵盤↑しっかり接着されている


木部よりわずかに大きいアクリル部と、圧着によりはみ出して固まった接着剤をヤスリで削り仕上げます。


ひとつひとつ万力(マンリキ)で挟み、全方向木部に合わせて削ります。
この削りが、けっこう難しい‼︎
削りすぎて木部まで削ってしまうと不恰好になってしまいますし、取り返しがつきません。
削り足りないと、はみ出した部分に指が当たれば怪我の原因になりますし、グリッサンドが上手にできなくなってしまいます。

ひとつひとつ丁寧に仕上げます。

削り終えた鍵盤


貼るだけでしょ?と思うような鍵盤の貼り替えも熟練した技術が求められる作業であることをご理解いただけたでしょうか?

ご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、鍵盤白鍵材は象牙やセルロイドなどいろいろな素材のものがあり、それぞれに修理方法が異なるので、今回ご紹介したのはほんの一例です。

欠けたり剥がれたりだけでなく、変色などの悩みにも対応いたします。ご自分で何かするのではなく、ますばご相談くださいね。