あらすじ
オカルトスポット探険サークルの学生六人は京都山間部の黒いレンガ屋敷ファイアフライ館に肝試しに来た。ここは十年前、作曲家の加賀螢司が演奏家六人を殺した場所だ。そして半年前、一人の女子メンバーが未逮捕の殺人鬼ジョージに惨殺されている。そんな中での四日間の合宿。ふざけ合う仲間たち。嵐の山荘での第一の殺人は、すぐに起こった。
(byアマゾンのページ)
「作曲家が6人を殺した館」が舞台となっているため、何かあるし何があってもおかしくない雰囲気があり、怪奇の土壌としては申し分ない。
招待主が参加者を存分に怖がらせるためにファイアフライ館のエピソードを紹介する、という設定が自然であるため、自分もまるで参加者の一人になったような気分で館が持つエピソードを楽しめる。
個人的に一番怖かった部分は、作曲家が自殺する直前に残した「蛍が鳴り止まない」というセリフ。
貴志祐介:天使の囀りの名台詞「天使の囀りが聞こえる…」に匹敵する名台詞だと思う。(もちろん両作品の鍵となるセリフとなる)
また、登場人物が皆個性的である。
演奏家6人を殺害した作曲家はいうまでもないが、マルチ商法まがいの方法で財を成した人物、クラブの長老様で全員の精神的支柱になっている人物、はねっかえりだが頭はきれる人物などなど、人物描写が巧みであるため、登場人物を想像しやすい。
キャラがたっている、というセリフがぴったりくるだろうか。
※以下ネタばれあり
物語後半のたたみかけがすさまじい。
蛍の幼虫時の標本、機械仕掛けの館、秘密の洞窟、洞窟内で起こる地獄絵図…
謎が一つ一つ明かされる度に怪異性がどぎつさを増す。物語の怪異性は全編通してぶれない。
トリックに関してだが、
諫早=語り手ではない、と気付いた時点で、「よっしゃ、物語の骨子となるトリックをあばいたぞ!」と浮かれていた自分が恥ずかしい…!!
目次に書いてある情報を疑うとは思いもしなかった…。
ただ、せっかくの男女入れ替えトリックを、最後のたたみかけの部分で使っているのはもったいない気がする。
論理的に謎を解こうとすると、男ではありえない部分ではあるが、そこに気づきかつ目次を疑うという離れ業が出来なかった…
本篇とは全く関係ないが、自分の手元にある本の帯には、「殺人鬼:ジョニー」とあり、本編では「殺人鬼:ジョージ」とあるため、何かの複線か!!と最後まで勘繰ってしまった。出版社の方、しっかり仕事してください。
賛否両論あるが、ラスト1ページの後味の悪さが個人的には好感が持てる。
物語の語り手を誤認させるトリックももちろん素晴らしいが、物語としてとても印象に残る1冊だった。
読んでよかった度 :☆☆☆☆☆
もう一回読みたい度:☆☆☆☆
『鴉』を読んでみたい度:☆☆☆☆☆