【ロンドン:ロイヤル・オペラハウスの『トゥーランドット』と『オテロ』】 | 人間の大野裕之

人間の大野裕之

映画『ミュジコフィリア』『葬式の名人』『太秦ライムライト』脚本・プロデューサー
『チャップリンとヒトラー メディアとイメージの世界大戦』岩波書店 サントリー学芸賞受賞
日本チャップリン協会会長/劇団とっても便利

土曜日の朝にテイト・モダンでのジャコメッティ展を駆け足でまわる。非常に刺激的。
昼に小塚君と待ち合わせて、ロイヤル・オペラハウスへ。スタンディングの13ポンドの席でプッチーニの遺作『トゥーランドット』を見る。
これはすごかった!
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中国のトゥーランドット姫に求婚するものは、姫の出す3つの謎に答えなくてはならない――ただそれだけの物語で3時間。見せ場に次ぐ見せ場。仮面を使った演出、求婚するカラフが情熱の赤い着物で、冷たくプライドの高い姫が真っ白の服など、奇をてらわず、わかりやすく効果的な演出。「この宮殿で」「誰も寝てはならぬ」など有名なアリアの絶唱。最後に、姫が「彼の名前は愛です」と高らかに歌い上げて幕。なんのこっちゃわからないのに、あまりの力強さに打たれて、強い感動を覚えた。これぞオペラ。
そして、1924年のプッチーニの死後、1926年に『トゥーランドット』が上演された、わずか7年後に『42ndストリート』が作られていることを思い出し、あらためて『42ndストリート』の持つ批評性に想いを馳せた。
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夜は、わたし一人で連続でロイヤル・オペラハウス。夜の部は、ヴェルディの『オテロ』。昼に見た『トゥーランドット』とはうってかわって、動く壁、壁にあいた無数の穴を使った陰影の、抽象的な舞台演出。もちろんシェイクスピアのロジカルでモダンな原作。これもオペラ。

モダンなドラマとしての『オテロ』、荒唐無稽なオペラの頂点ともいえる『トゥーランドット』、オペラとヨーロッパの時代を終わらせたアメリカのジャズ・ミュージカル『42ndストリート』、そしてアメリカのミュージカルの時代にとどめを刺したロンドン・ミュージカル/ポップ・オペラ『レ・ミゼラブル』・・創造=否定のポイントのきれいな四角形を数日で辿ることができて、いまぼくが取り組んでいる創作にもおおいに影響を及ぼしそうだ。
明日はロイド=ウェバーの新作『スクール・オヴ・ロック』を見る。さて、どんな五角形を作るのか?
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