私はアキラの行っている意味がわからず、不自然な沈黙が支配する。
やっと何か喋ろうとしたとき、ケンが伸びをしながら起き上った。
「起きたか、ケン」
まるで父親のように、アキラはケンの元に近づいた。
「おはよう、アキラさん」
「もう大丈夫か?」
「わかんないけど、もう頭は熱くないよ」
その姿は、何も知らなければ親子の会話そのものだった。
だが、私には舞台のワンシーンのようにしか見えなかった。
配役を与えられた役者が、そのロールを演じているかのような……。
「タカシ、ちゃんと紹介するよ」
アキラの声に、私は気のない返事で答えてしまった。
おずおずと慣れないリズムで、私はケンの元へ向かった。
純粋な目は私を見上げ、柔和な笑顔を作っている。
確か赤ちゃんは、相手に自分を襲わせないように笑顔を見せるとか聞いたことがある。
それも、いわばひとつのプログラムである。
このアンドロイドも、その所作をプログラムされて、自分より大きな人間に対して、
ただ「笑顔」を見せているだけなのかもしれない。
「やぁ、こんにちは」
「こんにちは、えっと」
「矢野タカシだ。よろしくね」
私はそっと手を差し出した。
ケンは私の行為に、戸惑いを見せた。
まるで人間に怯え、初対面の人にどう対処していいのかわからない、人見知りの子どものように。
「ケン、彼は僕の友達だ。その手も、友達になりたい証だよ」
「……う、うん」
ケンはアキラに促され、私の手をギュッと握った。
私は反射的に身構えたが、その手は驚くほどに柔らかくて、微妙に震えているのがわかった。
to be continue