母は私をピアノの先生にしよう、と
育てていました。
高校時代は
突き指してはいけないからと
バレーボールを禁止されたし
家では指を切ってはいけないからと
包丁も使ったことがなく
リンゴの皮も剥けませんでした。
夫に結婚を申し込まれたときは
不安でした。
しかし夫は
「何もしなくていい。側にいてくれるだけでいい」
と、言ったのです。
それを本気にした私は
プロポーズを受けたのですが
実際はそんな訳にもいきません。
毎日、食べますから
それなら美味しいものを作りたい、と
料理教室に通いました。
泥縄で何とかなるものですね。
料理が大好きになり
せっせと作りました。
母は
「美味しいものを食べさせていれば
浮気しても、妻の料理が食べたい、と
必ず戻ってくる」と言いました。
餌付け作戦なんだそうです。
浮気どころか
夫は山が大好き人間で
時間を見つけては山へ登っていました。
道を歩いていて
「あっ。向こうから綺麗な女の人が来た」
といっても
夫の目は道端の花を見ていて
「この花、可愛いね。なんの花だろう」って
言うのです。
そんな具合ですから
ほとんど喧嘩することなく
お互いに自由に生きてきたと思います。
家事がまったく出来なかった私ですが
今や結婚して50年も経ちました。
なんとかなるものだなぁ~と思いました。
色んな所へ連れて行ってくれ
美味しいものを食べさせてくれました。
あの世へ旅立つときは
楽しかったなぁ~と、逝けそうです。