二人キリ
村山由佳
あらすじ
脚本家の吉弥は、「阿部定事件」の関係者を探し出し、証言を集め続けてきた。
それぞれの証言が交錯し、事件から三十数年後、阿部定自身から真実を聞く。
感想
阿部定事件のことは、愛する男を殺し、陰部を切り取った事件とだけしか知らなかった。
愛がすごすぎる女としか思っていなかった。
読んでイメージが変わることはなかったし、背景を知ったからといって理解もできなかった。
ただ、すごい話を読んだとは思う。
まるで、全てが真実のように思え、その時代にタイムトリップしたように情景が浮かぶ。
かなり、情交場面やそういう表現が多いのだが、不思議なことに気持ち悪さはなく、さらりと読むことができた。
【証言なんてものは所詮、その人が話したい物語に過ぎません。そうしたって事実と虚構とが入り交じってしまう。】
【あなた自身はほんとうのことしか話していなくても、物事は見る角度によっていくらでも変わるわけだから、その意味で言えば僕は誰の話も信じていないのかもしれません。】〈264ページ〉
この小説は、【事実の軛を振り払って、真実に迫ったもの】なのかな。
簡単におもしろかった~とか、呼んでよかった~とかは言えないし、読んで何かが変わったとかもないけれど、夢中になって読めた本だった。
とにかく、すごい本だった。