夕方の山道を車で走っている。
周りは中ぐらいの山々に囲まれていて
道は川に沿って蛇行している。
対向車もなく、時々道沿いに現れる家は廃れ、人の住んでいる気配はない。
だんだんと陽が傾いてきて
周りの山々黒く見えてきて空がオレンジ色から赤黒く変わっていく。
私は日没を恐れ焦って運転するけれども
蛇行する細い道に終わりは見えず
ああこんなことならもっと早い時間に出発すれば良かったと後悔するけれども
そんなこと考えても今更どうなる訳でもない。
そうこうしているうちにあっという間に日は暮れてあたりは真っ暗で街灯すらない。
私は少し泣きたくなる。
一体あとどれくらいで目的地に着くのだろうか…
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この車の助手席に髪の長い目が綺麗な女性が座ったのは12年前らしい。
(私は11年だと思っていた…)
以来、彼女はその車の助手席にずっと座っていて
新しく買ったジャズのCDを聴いたりクラシックにかえたり、メロンパンを食べたりおしゃべりしたりしている。
いろいろなことがあった12年だけれども
彼女はその車を1度も降りなかったことで
いつまでも運転が上手くならない私に
「愛」を教えた。
私はもう日没の山道で、悲しくなることはない。
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「この席は、このお店で一番景色の良い席なのですよ。」
と通されて恋人と素敵な夜を過ごすことができたのは
「遅れてしまってすみません。」と言った私の笑顔が素敵だったとか、私がいつもこのお店で最高級のワインをあけるとか、父がオーナーシェフと友人だからとか
そういうことに関係があったのだろうか…
(嘘です)
いろいろとスムーズな一日だったので
「今日は五曜で良い日なのかな」
と恋人に言ったら
「それを言うなら六曜でしょう」
と言われて
本当にいつもありがとうございますって
心から思いました(笑)