『文月に不実の花咲く』 仁川高丸 (非公式グッズ) | 女道S

女道S

人生はセーラームーンと共に。

女性同士の恋愛を描いたデビュー作『微熱狼少女』で話題をさらった、小説家・仁川高丸先生の作品です。



女道S



女道S


表紙はきれいだし、表側の帯のコメントにもときめきます。ただ、裏側の帯のコメントの「多感な世代のセクシュアリティの揺らめきを描きだす」は、あの頃はなんとも思わなかったけど、今の時代に読むと違和感を感じますね。そうか、当時は若い女の子同士の同性愛は、多感な世代の揺らめきと言う扱いだったんだなぁ……



今や百合漫画や百合小説が巷にあふれていますが、私の思春期の頃は女同士の恋愛漫画や小説なんて血眼になって探してもほとんど見つかりませんでした。


たまにあったとしても、最後は男とくっつくとか、かわいい女の子同士の絡みを男がおかずにするための妄想エロがほとんどで、真摯に丁寧に描かれた女同士の物語は、私の知る限りでは仁川先生の『微熱狼少女』が初めてでした。(他にもあったのかもしれないけど、ネットのない時代の田舎の中・高校生に得られる情報は限られていたので……)


その仁川先生の作品の中でも私が一番好きなのが、この『文月に不実の花咲く』です。いや、仁川先生の作品の中で一番と言うよりは、今日までの39年間に読んだすべての小説の中で一番衝撃を受けたものかもしれません。



あまりネタバレしない程度に軽くストーリーを紹介すると


中学生の杉浦瞳は、女子なのにつめ襟の制服着用の転校生・渡辺良平(「あきら」と読みます。)に好意を持たれる。「好きだ」「きれいだ」を連発する良平に辟易しながらも、まっすぐな愛情に心が動き……


おっと、このくらいにしておきましょうね。後は読んでのお楽しみです!


ところどころにイラストが入っているのでイメージがつかみやすく、今流行りのライトノベルを先取りしたような先進的な作品です。しかし文章は軽くはなく、しっかりと味わい深い。各話ごとのタイトルの韻が美しくて大好きです。(「五月雨と淋しさと騒がしさと」「水無月の道行きの三日月の」)


この作品を読んだ時の衝撃は筆舌に尽くしがたいものでした。振られても振られても好きだ好きだと言い続け、欲求を持て余して迷走し、好きな女性に犬のように付き従う良平に、中学生の頃の自分を重ねずにはいられませんでした。


物語は感情移入が命と思っている私ですが、これほどまでに感情移入できる小説はそれまでに読んだ事がありませんでした。とにかく滅法おもしろかった! 


私がずっと求めていたのはこれだったのだ! こんな物語が世の中にたくさんあればどれほどいいか、どんなに仕事が辛くても楽しく生きて行けるのに! と強く思いました。当時はそれほどまでに、自分の嗜好に合った物語に飢えていたのです。


ちなみにこの本が出版されたのは1997年の12月のことです。2013年の今はありがたいことに、女性同性愛を描いた漫画も小説も驚くほどの量が出版されており、あの頃の私の願いが叶ったといえます。本当に、いい時代になりましたね。




さて、この作品を未読の皆さんは、おそらく今の時点で、ある疑問を抱いていることでしょう。


「なんでテーマがセーラームーングッズになっているの? 項目間違っていない?」


と。


いいえ、『文月に不実の花咲く』はれっきとした(非公式)セーラームーングッズの一つなのです! さぁ、こちらをご覧下さい!



女道S



見づらくて申し訳ありませんが、真ん中あたりに皆さんおなじみの素敵な文字がたくさん載っているでしょう?  


「うわぁ! なんておもしろいんだぁ! 私が求めていたのはこんな物語だったんだ!」と興奮しながら読み終え、余韻を味わいながら開いたあとがきに「良平にはモデルがいます。(中略)天王はるかという人です」との文を見た瞬間の私の衝撃がどれほど強烈だったかわかりますか? 


夜中だってのに居てもたってもいられず、こぶしを突き上げて部屋の中をぐるぐる走り回りましたよ! なぜか生まれてきて良かったとまで思いましたよ! その日はなかなか寝付けませんでしたよ! 次の日から何度も何度も読み返しましたよ! その後、別の書店で見つけて、我慢できずにもう一冊買ってしまいましたよ! ただの文字の羅列なのにここまで魂を揺さぶるなんて、小説ってすごいって思いましたよ!


モデルとは言え、良平とはるかさんは外見も性格も似ても似つきませんが、私が敬愛して止まないはるかさんのおかげで、私の人生の宝物愛読書『文月に不実の花咲く』が生まれた事実に、ますますはるかさんへの感謝の念を強めずにいられません!



おっと、熱く語っているうちに3月6日になってしまいましたね! みちるさんお誕生日おめでとうございます!


みちるさんのお誕生日だってのにはるかさん絡みのネタで熱く語ってしまったことを反省しつつも、まぁ、みちるさんが一番好きなのはもちろんはるかさんなのだから、むしろよろこんでいただけるかもしれませんね。


みちるさんの誕生祝いは夜に改めて。晩ごはんはごちそうだよ!