【お気に入り度★★★★☆】
【あらすじ】
キム・ナクスは、入社25年目を迎えた大企業の営業部部長。
出世街道を突き進み、ソウルの一等地にマイホーム、自家用車、安定した家族という「理想の人生」を手にしていた。
しかし、時代や会社の状況、家族の変化などにより、徐々に彼の「居場所」や「価値」が揺らぎ始める。
社内での立場が変わっていく、部下との関係、家族との関係もギクシャクし始める。
「本当の自分とは何か」「自分にとっての豊かさ・幸せとは」を問い直していくナクスであった。
【雑記】
主役のリュ・スンリョンさんは、「ムービング」で超能力を持つ親父さんを演じたときに、「かっこえ~~!!」と思いました。
ほぼ同年代のおじさまです。
味わいがあって素敵な役者さんですね。
そんなリュ・スンリョンさんが演じるキム部長。
序盤は、大手IT企業に勤める部長で、役員になるのを心待ちにしているおじさん。
上司にゴマをすり、部下には古い慣習を押し付け、何かいろんな意味で時代に合わなくなってきているズレ感漂う雰囲気です。
専業主婦の奥さんや、ソウル大に行けなかった大学生の息子に対しても、家族の思いを汲み取れず、大手企業の部長である自分が家族を支えているという思い込みがありました。
また、ベンチャー企業や、飲食業、サービス業などを心の中で軽蔑し、大企業の部長=人間の価値が上、という概念で生きていました。
その滑稽な様が、事細かに描かれていて秀逸でした。
序盤の彼の行動が、後の落ちぶれた先に全て繋がっていることが見ていて分かり過ぎるくらい分かるように描かれていました。
そんな彼が全てを失い、どうしようもなくなって後半はどん底に突き落とされていきます。
最終的に、奥さんから一言、「やっと本音が出たわね。あなたは家族を守るというのは建前で、本当は自分のプライドだけが一番大事なのよ。」と言われてしまいます。
やっとそのことに気付くキム部長。
会社にしがみついてプライドを守ろうとしていた自分に「お疲れ様」と決別し、やっとプライドを捨てて、肩の荷を下ろします。
今まで背負っていたプライドを捨てたことで、世界が一変。
車の整備工場を細々と営む兄貴のところで生き生きと働くようになり、前向きに考えられるようになります。
そして本当に大事なものは何かということに気付いていきます。
家族との絆も以前より深まり、本当の意味で支え合う家族となります。
50過ぎて訪れたキム部長の大きな人生の軌道修正。
同じ世代として、他人ごとではなくいろいろ考えさせられました。
キム部長をはじめ、周囲の人々それぞれの思いも細やかに描写されていて、上質なドラマでした!
