頓智で有名な一休は、「世の中の 娘が嫁と 花咲いて 嬶としぼんで 婆と散りゆく」と詠みましたが、どんな人にも老いが待っています。
博多聖福寺の仙厓は、老人六歌仙という句を残しています。
1.しわがよる ほくろができる 腰まがる 頭はげる ひげ白くなる
2.手は震う 足はよろつく 歯は抜ける 耳は聞こえず 目はうとくなる
3.身に添うは 頭巾 襟巻 杖 眼鏡 たんぽ 温石 尿瓶 孫の手
4.聞きたがる 死にともながる 淋しがる 心は曲がる 欲深くなる
5.くどくなる 気短くなる 愚痴になる 出しゃばりたがる 世話焼きたがる
6.またしても 同じ話に 子を誉める 達者自慢に 人は嫌がる
・身体の老化
どんなに年を取っても、心は青年期のままで、自分はまだまだ若いと思っているものです。しかし、肉体は確実に老化していきます。どれほどアンチエイジングしようが外見を若く見せようが、その衰えはごまかし切れません。
子供から「おじさん、おばさん」と呼ばれてショックを受けたり、鏡や写真に映った自分の姿に驚いたりします。
「まだまだ現役でやれる」と意欲があっても、強制的に辞めなければならない時がきます。
釈迦の時代にアンバパーリーという女性がいました。
美しさが評判になり国中の貴公子が彼女をめぐって争い、あまりの煩わしさにすべての縁談を断って遊女となったという人です。後に釈迦の信者となりますが、釈迦の弟子たちも美しさに動揺したため釈迦が戒めるほどだったといいます。
そんなアンバパーリーはやがて悟りを開き、次のような歌を残しています。
- かつては黒く 輝いた わたしの髪は 今はもう
老いに任せて 抜け落ちた 仏の言葉に 偽りはない
-
巧みな画家が 描いたような わたしのまゆは 今はもう
額のしわで 垂れ下がる 仏の言葉に 偽りはない
- 丸く膨らみ 上を向き つり合いとれた かつての乳房
今は醜く 垂れ下がる 仏の言葉に 偽りはない
- 仮初めの身は 老いさらばえて 苦を収納する 蔵のよう
塗料のはげた あばら家のよう 仏の言葉に 偽りはない
美人が老いるとギャップが激しいので、若い頃の姿と比較してみると無常がよくわかります。マリリン・モンローは若くして死んでしまったので、たとえば、オードリー・ヘップバーンなどを見比べてはどうでしょうか。
・老いの孤独
神戸で99歳の女性が自殺したというニュースがありましたが、周囲には「100歳になるまで生きるのが嫌だ。周りに人がいなくて寂しいのが嫌」と漏らしていたといいます。
家族がいれば幸せかというと、そうとも限りません。
遺産を相続する親族への嫌がらせのために、紙幣を細断して死んでいった女性もいます。
監察医の上野正彦(元東京都監察医務院長)は、30年間で2万体の死体を検死したという人ですが、彼の調査によれば、独り暮らしよりも3世代同居の老人の自殺率のほうが高く、その動機は家族からの疎外であるといいます。
「普通は家族と同居している老人は幸せで、独り暮らしの老人のほうがわびしい生活を余技なくされ、自殺しやすいと思いがちだが、調査結果はまったく逆だった」(上野)
ちなみに内訳は、3世代同居の自殺が30%強でトップ、以下、「独り暮らし」「夫婦ふたり暮らし」「子供とふたり暮らし」の順だったといいます。
父母恩重経には次のように説かれています。
「父母、年たけて気老い、力衰えぬれば、頼るところのものは、ただ子のみ。頼むところの者は、ただ嫁のみ。しかるに夫婦ともに、朝より暮れに至るまで、未だ敢えて一度も来たり問わず。あるいは父は母を先立て、母は父を先立てて、独り空房を守りおるは、あたかも旅人の、独り宿に泊まるが如く、常に恩愛の情なく、また談笑の楽しみなし」
(訳:親が高齢になって、気力や体力が衰えれば、頼れるのは子供だけであり、その嫁だけである。しかし、夫婦は共に、朝から晩まで一度も来てはくれない。親のどちらか一方が先に死んでしまえば、独りで寂しい家で過ごすことになり、その姿は旅人が一人で宿に泊まるようである。常に恩愛の情もなく、談笑の楽しみもない)
好きになれば愛別離苦、嫌いになれば怨憎会苦が待っています。
・介護に学ぶ老苦
「『介護に疲れた』発達生涯の長男殺害、容疑で80歳母親逮捕」(産経新聞2015年3月15日)
「『妻への愛情故の犯行』 嘱託殺人、93歳被告に猶予刑」(千葉日報2015年7月8日)
介護疲れによる悲劇も後を絶ちません。
毎日新聞の調査によれば、自宅で家族を介護している人の約7割が精神的・肉体的に限界を感じていたといいます。
重い介護生活となれば糞地獄です。「普通の人」が暴力を振るうようになり、どんなに愛し合った夫婦でも死んでくれたらいいと思うようになるのです。
東京工業大学名誉教授の今野浩は、妻(道子)の介護体験を綴った著書の中で、次のように人間の本性を素直に描写しています。
「道子を死なせる場合には、自殺に見せかける方法が必要だ。しかし完全殺人を狙っても、警察の調べにあえば他愛なく暴かれてしまう。何らかの方法はあるはずだが・・・・。『自殺大全』という恐ろしいタイトルの本を買って見たものの、私はこれが必要になるのはまだ先だと考えていた」
「あれこれ考えた末にたどり着いた答えは、道子に睡眠薬を飲ませた後、ストーブの脇に洗濯物を置き、自分も大量の睡眠薬を飲むことだった。2人の焼死体を発見した大泉の警察は、単なる過失として扱ってくれるだろう」
「道子の第一の難病を発症するまで、家族の将来には一点の曇りもなかった。ところが15年後の今、私は暗黒の中をさまようことになったのである」
「寝かせたかと思うと、15分後には痛くて寝ていられないと絶叫する。ところが椅子に坐らせ15分すると、また寝ると言う。夜の間中これが繰り返されるのである。
ウィークエンドは、ヘルパーさんは来ない。金曜の夕方から月曜の朝までの60時間の間に、私は完全に煮詰まってしまった。煮詰まった男は、絶叫する道子の口を塞いだ。すると手を振り切って、ますます大きな声を出す。夜中にこのような大声を出すと、確実に上の部屋に届く。もちろん外からも聞こえる。どうか泣き止んでくれ!!煮詰まった鍋からは、黒い煙とともに怒りの塊が噴き上げた。私はふたたび道子の頬を手のひらで叩いた。
しばらく前に悪い夢を見て泣き叫んだとき、頬を平手で叩いたことがあった。その時道子は、タオルを口に入れて死のうとした。猛省した私は、以後どのようなことがあろうとも、暴力を振るわないことを誓った。それなのに、また殴ってしまった。もし道子が元気だったら、即座に家を出て行くだろう。殴ったのは、逃げ出せないことがわかっているからだ。これ以上卑怯な行いはあるか。
私は道子に頬ずりして詫びた。反省するだけなら猿でもできる。15分後、私はまた殴った。それまでの理性的な道子と、泣き叫ぶ道子との落差が大きかったせいである」
2.1恋愛では絶対に幸せになれない
〇恋愛は無常
〇利己的な愛
〇人生は苦なり
〇老苦
〇愛別離苦
〇死苦
〇幸せになれない
〇死は解決できる