愛を悪く言う人はまずいないでしょう。
「人に優しくしましょう」とは幼稚園でも教わることです。
・愛の欠点
しかし、仏教では人間の愛を小慈悲と説きます。
慈悲とは愛のことで、「小」という字は崩れやすく、壊れやすい不完全な偽物を表します。つまり、人間の愛は欠点のある偽物の愛ということです。
たとえば、「利己的な遺伝子」といわれるように、人間は自分の利益を離れて愛を与えることができません。人間の愛は、何かしらの見返りを期待する自己中心的な愛であり、「無償の愛」などというものを人間は与えることができないのです。小説家の有島武郎は、「愛の表現は惜みなく与えるだろう。しかし愛の本体は惜みなく奪うものだ」と言いました。
また、自己中心的であるために愛情に差別もあります。たとえば、遠いアフリカの子供が餓死しても、自分の子供のかすり傷ほども驚かないでしょう。これは、アフリカの子供と自分の子供とで愛情に差別があるためです。
このように、人間の愛は欠点だらけの不完全な愛なのです。
・利他では幸せになれない
幸福研究が盛んですが、結論をみると、「金や名誉に価値を置く人ほど幸福度が低く、愛に価値を置く人ほど幸福度が高い、だから人を幸せにしましょう」という流れが多いようです。
このように利他で幸せになろうと考える人は多いですが、自利利他もまた、他の幸福と同様に無常の幸福です。「幸せ」が無常の幸福になっている限り、無常の幸福を与えて無常の幸福が返ってくることの繰り返しにすぎません。利他をするのは大変なことであり、利他をしないと幸せが得られないという境地は、善悪の区別がある不完全な境地です。
・利他は悟りのキーファクター
説明したように、現代では利他が健康のキーファクター(重要な要因)であるという人は多いですが、それだけでなく悟りへのキーファクターでもあります。
「報告によれば、人が悟りを体験している最中には他人への思いやりをより強く感じていることが多いようだ。だから、思いやりと親切心を育てれば、悟りへの道を拓くことにもなる」(アンドリュー)
むしろ健康にいいというのはオマケにすぎず、悟りに近づけるというもっと大きな力を愛は秘めているのです。このことについても第5巻では科学的知見を交えて詳しく説明しました。
1.5自利利他(人の幸せを優先する)
〇孤独の怖さ
〇利他の力
〇何をしたらいいのか
〇よく話す
〇利他心
〇利他の欠点
〇誹謗中傷の受け止め方