利他にも様々ありますが、ここでは「会話」を取り上げます。
精神衛生上も会話が重要であることは周知の通りですが、なぜ会話にそのような力があるのか仕組みはよくわかっていないようです。会話療法での改善事例は数多くあります。フィンランドのある施設では会話中心の療法で90%も統合失調症罹患率が減少したといいます。そして、なぜ会話にそのような効果があるのか、スタッフもわからないといいます。
「しゃべらないと治らない」といっても過言ではないくらい会話は重要なものですが、仏教でも次のように話すことが強く要求されます。
「『物を言え物を言え』と、仰せられ候う。『物をいわぬ者は、恐ろしき』と、仰せられ候う。『信不信、ともに、ただ、物をいえ』と、仰せられ候う。『物を申せば、心底もきこえ、また、人にも直さるるなり。ただ、物を申せ』」(御一代記聞書)
(訳:物を言え物を言え。物を言わない人は恐ろしい。信心があると思っている人もそうでない人も、皆ただ物を言いなさい。物を言えば腹底で思っていることもわかり、間違っていれば正すことができる。だから、ただ物を言いなさい)
要するに話さないと求道が前に進まないのです。
・大人しい人は思いやりがない
たとえば、自分の子供に危険が迫れば大きな声で助けを呼んだりするでしょう。大人しくするのは楽ですが、自利利他に反する利己的な行為です。
・よく聞く
自分の悩みでいっぱいなので一方的にしゃべりやすいですが、よく聞くことも大切です。相手の話によく耳を傾けるのです。人の話をよく聞く人は、相手に合わせた重い言葉を発し、重い言葉を発する人は、人の言葉も重く受け止めます。人の話を聞かない人は、相手に合わない軽い言葉を発し、軽い言葉を発する人は、人の言葉も軽く受け止めます。
ちなみに、心理学者のジェームズ・ペネベーカーによれば、「人は話せば話すほど、いっそう相手について知ったと思うようになる」といいます。
・対面の重要性
現代はネット社会ですが、とかくネット弁慶の人が多いです。外では大人しい人がネット上だと暴れだすのです。
こういう仕事柄、そういう人から私も迷惑メールをたまに送りつけられます。いつもは無視するのですが、ある時、その中の1人と話をしようと思い電話したことがあります。向こうは、まさか本当に電話してくるとは思わなかったようで驚いていました。メールの勢いはどこへやら、別人のように大人しくなり謝っていました。それからメールはしてこなくなりました。
この人の場合、こちらが電話する気になり、向こうも電話に出る気になったから良かったものの、あのままだったらもっとエスカレートして刑事事件にまで発展していたかもしれません。ネットとリアルが切り離されており、ネットの先に人がいるという想像力が欠如しているのです。ネット自体は善でも悪でもないですが、こういう人には悪縁となっており、簡単に悪をつくるツールになってしまっているので、こういう人はネットから離れる必要があります。
・人間の代わりになれるか
また、人工知能ロボットなどもある程度は代替手段となり得るでしょう。しかし、人間には人工知能が遠く及ばない能力があるように(詳しくは第1巻)、人間同士の会話にしかない力があるのではないでしょうか。
「レイ・カーツワイルというgoogleにいる研究者が・・・・おじいちゃんですけどね、いずれ人工知能が人間を超える、その時点をシンギュラリティと言っています。
僕はそうは思いません。彼は人間のこと、特に人間の怪しい能力がわかっていない。いまでも、たとえば将棋とか碁では人工知能のほうが強い。一部の能力は人間をはるかに超えています。ところが、人間固有の無意識レベルの働きとか、直感とか、透視能力とか、遠隔治療とかの能力はフォン・ノイマン型といわれる、いまのコンピュータでは手も足も出ない」(天外伺朗/元ソニー上席常務/ペットロボットAIBO開発責任者)
・コミュニケーションの有難さ
普段、何気なくコミュニケーションを取っていますが、コミュニケーションが取れるということは非常に有難いことです。
「閉じ込め症候群」となり、10年間も意識があることに気づいて貰えなかったマーティン・ピストリウスという人がいます。介護士からは物のように扱われ、看病に疲れた親からも「早く死んでくれ」と請われたそうですが、動けないため自殺もできなかったといいます。しかしある時、親身になって世話をしてくれていたセラピストが、マーティンに意識があることに気づきます。その時の気持ちをマーティンは、こう語っています。
「言葉では言い表せません。コミュニケーションというのは、できなくなるまでその重要性に気づかないもの。コミュニケーションが僕の人生のすべてを変えてくれました。意志を伝えられるというのは本当に素晴らしい事です」
コミュニケーションが取れるうちに肉体は使うべきです。
ちなみに、今はブレイン・マシン・インターフェース(BMI)などを使って、ある程度は閉じ込め症候群の患者とコミュニケーションを取ることもできるようです。
1.5自利利他(人の幸せを優先する)
〇孤独の怖さ
〇利他の力
〇何をしたらいいのか
〇よく話す
〇利他心
〇利他の欠点
〇誹謗中傷の受け止め方