生き方とメンタルヘルスには密接な関係があります。

ハーバード大学の精神科医レオン・アイゼンバーグは、「ライフイベントの影響を無視する精神医学には心がない」と言っていますが、精神医学でも「生き方」に注目するよう主張する人は少なくないようです。

「なぜ人がうつ病になるかを理解するには、ライフイベントを考慮に入れなければならない。これはまさに精神療法がしていることである」(ジョエル・パリス)

 

「薬でごまかすのではなく、皆、ある大切な事実に向き合わなければなりません。それは、心の痛みも不安も憂うつも、すべては人生の一部であり、薬でごまかすことはできないということ」

「薬は人生につきまとう憂うつや不安をすべて消し去ってくれるわけではありません。貧困、失業、超過勤務、パワハラ、派遣切り、多重債務、対人関係、家族関係、これらの問題を投げかけてくださっても、私どもはまことに無力です。薬はこれらを解決してくれないでしょう。ご自身以外の誰一人、これらの問題を解決する人はいないのです。どうぞ、お忘れにならないように」

「精神科医なんて職業は、この世から消えてなくなっても大したことはありません。ただ、患者さん自身が『自分の問題を解決できるのは自分だけ』という自明の事実に向き合いさえすればいいのです」(井原裕)

 

「そもそも、その人のうつや自殺願望などが、死別などによる実存的な問題なのか、それとも脳内のホルモン分泌などによるものなのか、という診断である。後者であれば、カウンセリングはまったく無力で、速やかに投薬治療と行う他はないのである。反対に実存的な問題の場合、症状を一時的に抗うつ剤などで抑えたとしても医薬品だけでは限界があるので、根本的な解決は今後の生き方に関するカウンセリングによる」(カール・ベッカー/京都大学教授)

 

心の病を普通の悩みの延長ととらえるのは認知療法などでもいわれていることです。

女優のマリリン・モンローは、精神病院に入院したことがあります(詳しくは第8巻「マリリン・モンロー」)。その時に酷い扱いを受けており、彼女は医者に対して次のような批判をしていますが耳を傾けるべきでしょう。

「医者というのは本の中で学んだことにのみ興味を持つのではなく、もっと臨床上の患者のことで経験を積まなければならないのではないでしょうか。人々の話に、人生は苦しみであるという人々の話に、もっと耳を傾けて、もっと色々なことを学ばなければならないのではないでしょうか。医者は自分たちの規律を気に掛けるあまり、患者を放っておき、患者が死んだ後になって初めて関心を示すふりをしているような気がします」

 精神科医のジョージ・リッチーは「今までに読んだ最良の医学書は患者たち自身だ」と言いました。

 

これから説明するように「人間として正しい生き方」というものが存在するのですが、まずは世間一般の人がどんな生き方をしているか見てみましょう。

〇誰もが幸せを求めている

〇幸せの欠点

〇人間は目的がわからず生きている

〇死の解決

〇心の病は悪なのか

〇気にする

〇根本的に違う療法

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第1章 心の病と仏教療法
1.1 メンタルヘルスと仏教の関係
1.2 人生の目的(正しい生き方を優先する)
1.3 因果応報(原因を追究する)
1.4 無常観(死を直視する)
1.5 自利利他(人の幸せを優先する)
1.6 自己を知る(クセに気づくだけ)
1.7 行学(気づくまで行動する)
1.8 心身不二(肉体も健康にする)