昔は、心の問題を抱えたら寺へ行き僧侶の説法を聞くことで解決していました。これから詳しく説明していきますが、現代でもメンタルヘルスに関する様々な問題に対して仏教は有効で、それは多くの人が認めるところです。

「仏教のアプローチは、現代の医学(科学)のそれともまったく矛盾しない合理性に貫かれていると言ってよい。仏教は現代の目から見ても決して引けを取らないすぐれた『(精神)医学』であり、心を深く見つめる『心理学』、そして苦悩を解放するための『心理療法』なのである。ブッダは実際、莫大な数の人々にきわめてすぐれた『心理療法』を行った偉大な『医師』であり『心理学者』であり、『心理療法家』であった」

「心理療法に携わる人間は、東洋やブッダの考えを決して無視することはできないはずである」(安藤治/精神科医/花園大学教授/「心理療法としての仏教」より)

 

「仏教そのものが、宗教というよりは、いかにして煩悩を捨てて苦悩から解放されるかという思想体系なのであって、これだけ歴史の風雪に耐えてきた思想が有効でないわけはない。仏教こそはエビデンスに基づいた正しい意味での『幸福の科学』かもしれないのだ」(斎藤環/精神病理学者/筑波大学教授/「人間にとって健康とは何か」より)

 

「仏陀とは、世界の根本原理を探求した哲学者であり、最大の心理療法家であり、救済者であり、行者である」(平井孝男/精神科医/「仏陀の癒しと心理療法」より)

 

第1巻から詳しく説明してきましたが、科学の仏教への接近がうかがえる点は多々あります。これも多くの人が認めるところで、それがわかる表現を参考までにいくつか挙げてみます。

「仏教は近代科学と両立可能な唯一の宗教であり、現代科学に欠けているものを埋め合わせてくれる宗教があるとすれば、それは仏教である」

「科学を何に使うか、その目的を教えてくれるのが仏教である」(アインシュタイン)

 

「仏教は宗教というよりも、むしろ精神哲学であり、近代科学のように冷静で、かつ客観的である」(C・ハンフレーズ/思想家)

 

「仏教と物理学の類似点、特に素粒子物理学との類似点は、驚くほどたくさんある。それゆえどちらを学ぼうとする者も他方に価値を見出すに違いない」(ゲーリー・ズーカフ/「踊る物理学者たち」著者)

 

「科学と宗教の対立の歴史は長い。だが、宗教が仏教なら、対立という言葉は当てはまらない。科学と仏教の間には対立はない。それどころか、同じ真理を探すものとして目標を分け合い、協力し合うことができる。この『真理』は、もちろん、普遍的な意味の『真理』だ」(シャロン・ベグリー/サイエンスライター)

 

「量子論は、東洋の古の智恵の正しさを例証し、強調し、純化する」(ジュリアス・ロバート・オッペンハイマー/物理学者)

 

「ブッダは優れた神経科学者であり、物理学者でもあった」

「ウィリアム・ジェームズの心理学と仏教哲学、そして量子論は一致する」(ジェフリー・M・シュウォーツ/カリフォルニア大学精神医学研究教授)

 

「私は、こうした量子力学の発展による東洋神秘思想への接近に恐怖を抱いている」(ジョン・テイラー/物理学者)

 

「私は東洋の神秘主義は西洋の科学を超えていると思う。東洋の神秘主義は、西洋の科学がまだ発見していないような自然の奥深いところを理解していると思う。これに対し科学は、まだ自然の中の心らしきところのほんの表面をひっかいただけである」(ブライアン・ジョセフソン)

 

「なぜ仏教は正しいかという問いに対する私のいちばん短い答えは、私たちが自然選択によって生み出された動物だからだ。自然選択は私たちの脳に傾向をそなえつけた。そして初期の仏教思想家は、利用できる科学的な手段がとぼしい中でその傾向を見極めるというすばらしい仕事をやってのけた。今では自然選択に対する現代の理解と自然選択が生み出した人間の脳に対する現代の理解を踏まえて、この見極めを新たな視点から弁護できる」(ロバート・ライト/科学ジャーナリスト)

 

「現代物理学的世界(自然)観と、東洋の伝統的自然観にある共通点が存在することは、ハイゼンベルク、湯川秀樹、オッペンハイマー、シュレーディンガーなどの錚々たる物理学者たちがそろって認めているところである」(浅野孝雄/埼玉医科大学名誉教授)

 

「現代の物理学は近代科学の限界に挑戦しながら、いつのまにか東洋的な世界観に接近をし始めた」(石川光男/国際基督教大学教授)

 

「現代は、唯識が哲学として求めたことの多くが科学的事実として知られている時代でもあります。このことは、唯識にとって、また仏教にとってまことに幸せなことで、仏教は恵まれた時代にあるといえましょう」(泉美治/大阪大学名誉教授)

 

「西洋では仰々しく『無意識の発見』などと言っているが、仏教ではそんなの当たり前のことだったのではないか。仏教の『唯識学』などは深層心理学そのもので、千年以上もたってから西洋で『発見』などと言い立てることもない」(河合隼雄/元文化庁長官/京都大学名誉教授)

 

「仏教の教義は、仏教誕生の2000年後の20世紀になってようやく登場した量子論によって、初めて科学的に立証されたということである」(岸根卓郎/京都大学名誉教授)

 

「釈尊は、縁起の理法に基づき、世の中に自分だけというものは1つもなく、ものは皆、お互いに繋がり合っていると説いていますが、実際に宇宙の中で、ものが皆、時空を隔ててお互いに不思議な仕方で繋がり合っていることが実験的に確かめられている。この点でも釈尊の教えと現代科学は矛盾するところはないといえるでしょう」

「ガリレオの逸話などから、キリスト教は自然科学とはうまくやっていけないのではないかという印象が強いのに対し、仏教関係ではそのような話は聞かない」(櫛田孝司/大阪大学名誉教授)

 

「近代量子力学が突きとめた『この世』の本質は、仏教と完全に波長が合っている点に今欧米の科学者たちが深い感銘を受けている」

「量子力学の登場で科学と宗教は否応なく接近しつつあり、将来は必ず交わる運命にある。量子力学の行き着く先は、東洋哲学そのものの仏教思想といえるからである」(コンノケンイチ/サイエンスライター)

 

「科学は、仏教的な世界観の方へと次第に近づいてきている。キリスト教を真っ正直に信仰しながら科学的に生きることは不可能である」

「特に最近の脳科学の発展は、物質世界と精神世界の壁を次第に破壊しつつあるから、いよいよ科学と仏教のボーダーラインはぼやけてきている。私は、将来ひょっとすると、仏教が科学と一体化するのではないかと思っている」(佐々木閑/花園大学教授)

 

「明治維新から100年が経過し、近代科学はさらに進歩して、不思議にも東洋哲学に歩み寄ってしまいました」(天外伺朗/元ソニー上席常務/ペットロボットAIBO開発責任者)

 

「現代物理学はとうとう仏教と同じことを言い出しました。私は仏教は物理学の進んで行く究極のところを先取りしていたといえるように思います」

「現代科学と仏教とは相互に矛盾はなく、仏教は科学を包み込んで説くことのできる唯一の宗教です」(水原舜爾/岡山大学名誉教授)

 

同じような「接近」がメンタルヘルスの分野にも見ることができます。多くの心の病が治っていることが何よりの証拠です。

〇なぜ仏教は廃れたのか

しかし、現代では心の悩みを寺へ行き、仏教で解決しようとする人はほとんどいません。理由は色々とありますが、精神医学の誕生はその一因でしょう。

「もともと人間関係の問題などは、昔であれば、寺の住職とか、村の長老とか、駐在のお巡りさんなど、民間篤志家ともいうべき役回りだったが、いつの間にか精神科医が受け持つようになった。(中略)これがある意味で、不幸の始まりだ」(井原裕/獨協医科大学越谷病院こころの診療科教授)

精神医学が誕生したことで治りやすくなったのであればいいのですが、先に説明したようにまったく違う結果になってしまいました。

また、伝える側にも問題があります。

詳しくは第6巻で説明していますが、現代の僧侶は、仏法を説くという本来の僧侶の仕事とは違うことをしています。副業として僧侶の仕事をしたり、たまに僧侶の仕事をしても葬式で金儲けをしたり、平気で仏教を捻じ曲げます。数多くの寺と僧侶がいながら、まったく活かせていません。

2014年の文化庁調査によれば、全国の寺院の数は約76,000、僧侶の人数は377,898人となっています。同じ年の全国のコンビニの数は約52,000、歯科医院の数は約68,000となっており、これらと比較しても多い数であることがわかります。これだけの僧侶たちが正しい仏教を伝えれば、仏教はここまで衰退せず、多くの心の病を解決できるはずなのです。

 

〇様々な「仏教」

森田療法や内観法など、仏教の考え方を取り入れたとされる療法はすでにいくつかあります。内容は千差万別です。ベースにしている「仏教」が異なるので、できあがる療法もまた異なるのです。間違った仏教をベースにしていれば、できあがる療法もまた間違ったものになります。これからも様々な仏教をベースにした、様々な療法が生まれるでしょう。

私の知る限り、世に流布している仏教系の療法は、間違った仏教をベースにしている間違った仏教療法です。正しい仏教をベースにした正しい仏教療法を本書で説明していくつもりです。

 

〇仏教でなくてもいい

「すべての人間に共通する幸せになるための真理」というものが存在し、その真理を説いているだけというのが仏教の主張です。正確に言うと、仏教で説かれるから真理なのではなく、真理だから仏教で説かれているということです。ニュートンが万有引力を発見したように、すでにある真理を釈迦が発見しただけです。

ですので、誤解を恐れず言うと、その真理さえ教えていれば仏教でなくても構わないのです。真理は仏教だけの専売特許ではありません。真理をもっと的確に表現している教義があれば、そちらを取るべきです。今のところ総合的に考えて「仏教療法」という名前でやっていますが、将来的には変える可能性もあります。

・「宗教は嫌い」

おかしい「宗教」や「仏教」で溢れているので無理もありませんが、これは宗教や仏教への偏見からくるものです。

「宗教」とは書いて字の如く、「宗(むね)とする教え」であり、この言葉自体は本来、善でも悪でもありません(ちなみに元は仏教の言葉です)

以前、当会の広告をある媒体に出そうとしたところ審査で落とされたことがありました。理由は規約の「宗教に該当」とのことでした。おそらく「仏教療法」という言葉を見てそう判断したのでしょう。しかし、「うちは宗教ではない」と返信したところあっさり掲載が許可されました。

「宗教を信じない」という人は多いですが、何が宗教で何がそうでないのか、なぜ宗教はダメなのか、仏教とは何か、科学との違いは何か、そういったことをはっきり理解している人は少ないです。

 

〇何をしたらいいのか

仏教の教えはすべてメンタルヘルスに有効です。

そして、その仏教のエッセンスを第1巻から第6巻までの前6巻にまとめました。ですので、結論から言ってしまえば、「第1巻から学び実践するのが1番いい」ということになりますが、メンタルヘルスに有効なキーワードをあえて7つに絞るなら次を挙げたいと思います。

 

1.人生の目的(正しい生き方を優先する)

2.因果応報(原因を追究する)

3.無常観(死を直視する)

4.利他(人の幸せを優先する)

5.自己を知る(クセに気づくだけ)

6.行学(気づくまで行動する)

7.心身不二(肉体も健康にする)

 

これらは仏教の重要なキーワードでもあります。

これから各キーワードについて詳しく説明していきます。よくわからないところもあると思いますが、できそうなところから始めてみてください。別々のキーワードに見えても根底ではつながっているので、やがて全部わかるようになるはずです。

次へ「1.2 人生の目的(正しい生き方を優先する)」

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第1章 心の病と仏教療法
1.1 メンタルヘルスと仏教の関係
1.2 人生の目的(正しい生き方を優先する)
1.3 因果応報(原因を追究する)
1.4 無常観(死を直視する)
1.5 自利利他(人の幸せを優先する)
1.6 自己を知る(クセに気づくだけ)
1.7 行学(気づくまで行動する)
1.8 心身不二(肉体も健康にする)